あなたの「好き!」に、日本酒が答える!

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~04.文学・芸術・音楽好きやオタクのあなたへ~

ややもすると堅苦しく感じられる日本文化ですが、ここに日本酒が関連づけられると、一気に気さくで柔らかく、身近なイメージになります。そして、日本の文学や芸術や伝統芸能、様々な分野の大家や著名人らには、実は日本酒好きの方々が少なくないのです。ではまず、やはり司牡丹酒造の例から、ご紹介させていただきましょう。詩人であり童謡・民謡作詞家として、「十五夜お月さん」「七つの子」「赤い靴」「シャボン玉」などの数多くの名作を残した野口雨情は、司牡丹に来社された際、「銘酒司牡丹歌謡五章」を作り自筆で書き残され、現在社内の「司牡丹・酒ギャラリーほてい」に展示されています。狂言・大蔵流の茂山千之丞(二世)は、司牡丹の超辛口・純米酒「船中八策」の大ファンで、著書の「狂言じゃ、狂言じゃ!」の中には「狂言船中八策」という章もあるほど。お葬式の祭壇にも「船中八策」が供えられていました。合掌。日本の全植物の約3分の1の名付け親となり「日本植物学の父」と称される植物学者・牧野富太郎は、司牡丹の故郷・佐川町出身で実家は造り酒屋であり、その蔵は現在の司牡丹酒造の一部となっています。高知県出身の直木賞作家・宮尾登美子の作品に「楊梅(やまもも)の熟れる頃」という小説風・ルポ風エッセイ集があり、その中には「司牡丹とおきみさん」という短編作品が収録されています。また、映画化・ドラマ化もされた人気作「蔵」の後書きには、司牡丹の蔵の雰囲気に憧れ、日本独自の酒造り文化に魅せられて、何十年も前から「蔵」を書こうと企てていたとの記述もあります。同じく高知県出身の直木賞作家・山本一力さんの作品には、司牡丹を江戸で売り出すという歴史小説「牡丹酒」(~深川黄表紙掛取り貼<二>~)があります。さらに、現在も継続中の「龍馬奔る」や「ジョン・マン」の中にも、度々司牡丹が登場しています。また、ミュージシャンの松任谷由実さんは、「月刊カドカワ」(平成5年1月号)「松任谷由実特集」の「ユーミンにきく100の質問」で、「好きなお酒は何ですか。」という質問に対し、「司牡丹というお酒が好きです。」と答えてくださっています。ちなみにミュージシャンの織田哲郎は私の従兄弟で、漫画家の黒鉄ヒロシは私の父の従兄弟になります。
 他の蔵元の事例も、いくつか挙げておきましょう。小津安二郎監督の映画「小早川家の秋」という酒蔵を舞台にした名作は、京都府「月の桂」の増田家で撮影されています。伊賀出身の俳聖・松尾芭蕉には「年はみな人にとらせていつも若戎」という句がありますが、三重県・伊賀の地は古くから「初戎」の伝統行事が盛んで、その際に年酒を酌み交わすという風習があり、そこから三重県の「若戎」が命名されているそうです。文豪・志賀直哉が書いた「清兵衛とひょうたん」という小説は、奈良県の「春鹿」今西家代々の襲名である“清兵衛”からヒントを得ているそうです。兵庫県・丹波の「小鼓」の玄関口には、「ここに美酒あり、名づけて小鼓といふ」という高浜虚子の句碑が立っている通り、酒名は高浜虚子の命名であり、虚子はもちろん、夏目漱石らの文人墨客の来訪者も多かったようです。岡山県「御前酒」の辻家には文人墨客の逗留客が多く、与謝野鉄寛・晶子夫妻、河東碧梧桐、永井荷風、谷崎潤一郎らも逗留しており、谷崎の名作「細雪」は、当地の仮住居で執筆されたそうです。横山大観画伯は広島県「酔心」の熱烈なファンで、91歳の長寿まで1日平均二升三合もたしなんだという有名な話があるほどで、こちらの蔵にはそんな縁で「大観美術館」があります。同じく広島県「賀茂泉」の前垣家の石庭は造園家の重森三鈴(みれい)の傑作と言われ、日本庭園史にも取り上げられているほどで、その庭の一隅には山口誓子の「寒庭に白砂敷きつめ酒づくり」という句碑も立っているそうです。
 そして、漫画やアニメ好きのオタクの方々向けのネタも、ご紹介しておきましょう。平成28年に大ヒットした、アニメ映画「君の名は。」と特撮映画「シン・ゴジラ」は、実は何とこの2本の映画共に、日本酒に関連する内容が盛り込まれているのです!まず「君の名は。」は、ヒロインが巫女さんで、「口噛み酒」を造るシーンがあり、その「口噛み酒」はストーリーの中でも大変重要な役割を果たしています。ちなみに「口噛み酒」とは、煮た米を口で噛んでつくるという日本酒の発祥とされている酒です。そして「シン・ゴジラ」では、ゴジラを倒すために日本政府が立案した最後の作戦名が、「ヤシオリ作戦」なのです。これは映画では何の説明もありませんでしたが、スサノオノミコトがヤマタノオロチを退治する際に、オロチに飲ませて酔っぱらわせた、水の代わりに日本酒で日本酒を仕込み、それを8回繰り返したという「八塩折(ヤシオリ)の酒」からの命名であることは明らかです。ちなみにこのお酒は、現代でいう貴醸酒(きじょうしゅ)のことになります。また、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」で、ミサトさんが飲んでいる日本酒が山口県の「獺祭(だっさい)」であるというのは、ヱヴァファンにはかなり有名なネタですね。これは庵野秀明監督も、主キャラデザインの貞本義行さんも、山口県出身であったからだと言われています。ところで、最後に再び自社ネタで恐縮ですが、司牡丹酒造の所在地である佐川町は、人気声優の小野大輔さんの故郷でもあり、小野さんがラジオで「司牡丹でお酒をつくりたい」と語られたことから話が進み、「司牡丹AMAOTO」という純米酒を発売しています。この商品は、酒造りの際に小野さんが櫂入れ(かいいれ=棒で混ぜること)し、小野さんのシングル「雨音」(※2年目からは「雨音-Refrain-」)を聴かせたという、小野大輔さん完全プロデュースの日本酒です。
 日本酒の蔵元は、長い歴史の中で地域文化をリードし、メセナ的な活動を続けてきた企業が多いため、様々な芸術家や著述家・文化人たちとの因縁や関係が深い蔵元は、まだまだ数多く存在しているはずです。また、漫画やアニメ、声優関連でも、自身の出身地の日本酒蔵元を応援したり、オリジナル酒を発売したりという事例も、まだまだたくさん存在しているはずです。こういった視点で、全国の日本酒蔵元を調べてみるというのも、これは相当面白いのではないでしょうか。そんな中で、幸せの発見回数が増え続け、「今この瞬間の幸せ」に気づく力が養われ、あなたの人生は幸せに導かれていくことでしょう。