「酒道 黒金流」創始への念い

remember

「コロナ禍の長期化で、人間関係がドンドン遠ざかって疎遠になってない?」
「なんだか年々、ギスギスした息苦しさを感じる世の中に進んでない?」
「たとえば、鰹節のつくり手がいなくなってしまったら、『和食』はどうなるんだろう?」
「飲酒の健康被害は分かるけど、ちょっと酒類を悪者にし過ぎてない?」

 人間関係、社会、食文化、酒文化の4つの分野について、上記のような不安の声を、最近耳にすることが増えました。
 いま、長期化するコロナ禍で、人と人との距離が遠ざかることで「分断」され、人間関係が一層「疎遠」になり、多くの人々が「孤立」しつつあります。
 そして世の中は、誰もがギスギスした息苦しさを感じるような、全てを損得勘定で考える社会、総イライラ社会、不寛容社会になりつつあり、あらゆる分野で多様性を狭める方向に向かっています。
 一方食の分野では、近年少子高齢化や地域社会との関わりの希薄化が進み、また世界的な食のグローバル化の嵐の中で、日本中の各地域から、地域ならではの伝統的な食文化や季節性のある旬の食文化が消え去ろうとしています。
 そして、酒類に対する考え方は、世界中で年々厳しくなっており、健康被害が喧伝され、規制は厳しくなり続け、酒類の存在自体を悪と決めつけるような流れまで起きはじめています。
 この4つの流れのままに進めば、人間関係はまったく疎遠で、多様性が極めて狭い不寛容社会で、日本中どこに行っても1年中同じような食事だらけで、飲酒者は犯罪者のような目で見られる・・・そんな未来が待っていることになります。あなたは、そんな世界で暮らしたいと思うでしょうか。
 私は、いまから30年ほど前に家業である高知県の酒蔵・司牡丹酒造に跡継ぎとして戻り、25年ほど前に、かつて日本に「酒道」なるものが存在していたということを知りました。茶道や華道のように、かつて実際に存在していましたが、江戸時代末期に消滅してしまったようです。私は、この「酒道」をいつかは復活させたいと思い、以来四半世紀にわたって、「日本酒の道、酒道とは?」について考え続け、探求し続けてきました。しかし正直、まだまだ先のことだと思い、具体的な行動は何も起こしてはいませんでした。ところが、この度の長期化するコロナ禍において、このような4つの流れが一気に顕在化しはじめたことから、このような忌まわしい流れを何とか押しとどめたいと考える中で、「酒道」の復活こそが解決策につながるのではないかと気づいたのです。
 「酒道」については、一部古文書などの文献も残っているようですが、何もこの頃の「酒道」をかつての姿のまま復元しようというのではありません。私が考えるのは、新時代にふさわしい姿で新たに生まれ変わった「酒道」として復活させようということです。ですから、当家の屋号である「黒金屋(くろがねや)」から、「酒道黒金流」と命名させていただきました。「酒道黒金流」とは、「日本酒を媒介として、人生を彩り豊かに愉しくする方法や、親密で豊かな人間関係を生み出す力や、地域や季節ならではの多様な食文化・酒文化や、そこに内包されている作法や精神などを、仲間と共に学び体得していくことで、幸福に向かう人間的な成長の道を歩む人々を増やし、世の中に進歩と調和をもたらす。」というものです。
 そして「酒道黒金流」は、日本酒における「精神と物質の再統合」を目指します。日本酒における「精神」とは、日本酒の伝統、歴史、文化、理念、意味、意義、意志、魂・・・といったところでしょうか。日本酒における「物質」とは、モノとしての日本酒そのもののことです。日本酒が「神事のための魔法の水」であったり、「人生儀礼における必需品」であったりした、数百年もの昔の日本においては、日本酒の精神と日本酒という物質は、ひとつに統合されていたはずです。それが時代を経るごとに、次第に引き離され、遠く分断されてしまっています。現代においては、「最高峰の山田錦を精米歩合35%まで磨き・・・」といった具合に、モノとしての魅力しかほとんど語られていませんが、それだけでは本当の日本酒の魅力の半分も語ってはいないのです。数百年ぶりに、日本酒の「精神と物質の再統合」を果たすべき時代が訪れたということであり、そんな日本酒における「精神と物質の再統合」を目指す「酒道」の復活こそが、忌まわしい4つの流れを押しとどめることにつながると考えます。そして、私たち「酒道黒金流」は、現代の忌まわしき4つの流れに対し、断固反旗を翻し、「ノー!」といいます。
  • ●人と人との距離を遠ざける流れに「ノー!」
    あらゆる酒類の中で、日本酒は最も人と人との距離を近づける、親密性が特徴の酒であるといえます。隣り合わせて肩寄せあって、差しつ差されつ酌み交わす日本酒の、何と美味しく何と幸せなことか!そして、中でも土佐の高知は、さらに日本一と言ってもいいほど人と人との距離を近づける酒文化の伝統を持っています。大皿の「皿鉢料理」を取り分け合い、席も移動し合って共有し、杯も共有して酌み交わす返杯・献杯、「はし拳」「可杯(べくはい)」などのお座敷遊びも全て杯を共有し合うなど、人と人との距離が近すぎるほど近いというのが特徴なのです。「酒道黒金流」では、このような「日本酒は最も親密性の高い酒である」という日本酒最大の特徴や、中でも「土佐酒は日本一親密性の高い酒文化の伝統を持っている」という土佐酒最大の特徴などを、しっかりと伝え広めていきます。これにより、たとえコロナ禍がかなり長期化し、人と人との距離が近い飲み方が現実にはしばらく難しくなったとしても、離れていてもつながっている状態を生み出し、心と心の距離は近づけることができると考えます。ウイルス以上に人の命を脅かすのは、人と人とのつながりを「分断」し、人間関係を「疎遠」にし、人を「孤立」させるような流れの方です。ウイルスと直接戦うことは私たちにはできませんが、「分断」「疎遠」「孤立」となら戦えます。そのための最強の武器が「酒道黒金流」なのです!
  • ●多様性を狭める流れに「ノー!」
    いま世の中は、あらゆる分野で多様性を狭める方向に向かっています。しかし、進化の歴史を見ると、多様性を狭めた集団は滅亡に向かうというのが常識です。そんな世の中の流れに歯止めをかけるために最も必要なのは、人生の豊かさや、ゆとり、幅、遊び等々でしょう。まさに「酒道黒金流」は、人生に豊かさや、ゆとり、幅、遊びを与えてくれます。そして、日本全国の蔵元が、それぞれの地域の歴史や伝統、地域の食文化と今一度しっかりと結び付きを深め、それらをベースとして「酒道〇〇流」を立ち上げ、伝え広めていったなら、全国各地に多様な「酒道」文化が百花繚乱花開くことになるはずです。「酒道黒金流」は、全国各地に多様な「酒道」の流派が立ち上がるよう、全力で応援します!
  • ●地域性や季節性を消し去る流れに「ノー!」
    いま、日本中の各地域から、地域ならではの伝統的な食文化や季節性のある旬の食文化が消え去ろうとしています。地域の気候風土を無視して、日本中が同じ食べ物だらけになったとしたなら、それは果たして豊かなことなのでしょうか。しかし、日本全国の蔵元が、「酒道〇〇流」を立ち上げ、その地域の酒類問屋・酒販店・飲食店・日本酒ファンらとガッチリと手をつなぎ、それぞれの地域の風土を具現化したような個性あふれる日本酒を、地域の食の美味しさを引き立てるような日本酒を醸し、「酒道」を伝え広めていったなら、全国各地の多様な「食文化」を内包した「酒道」文化が百花繚乱花開くことになるはずです。「酒道黒金流」は、全国各地に多様な「食文化」を内包した「酒道」の流派が立ち上がるよう、全力で応援します!
  • ●酒類の存在自体を悪と決めつける流れに「ノー!」
    2010年の第63回WHO総会において「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」が、全会一致で採択されて以来、酒類に対する考え方は、世界中で年々厳しくなっており、健康被害が喧伝され、その規制は厳しくなり続けています。さらに長期化するコロナ禍で、歯止めのかからない家飲み増加によるアルコール依存症の問題も喧伝されています。そんな中で、酒類の存在自体を悪と決めつけるような流れまで起きはじめているのです。「酒道黒金流」は、単なる道徳などではない「道」という概念によって、酒類の規制や健康被害等をしっかりと学び、自らを律することで、日本酒を媒介とした人間的な成長の道が成り立つことを、はっきりと世の中に示します!
 さらに結果として「酒道」の普及は、コロナ終息後における日本酒の輸出拡大にも、大きな力を発揮することになるでしょう。日本酒の輸出拡大には、「モノ」ではなく「コト」、つまりハード面ではなく、ソフト面の充実が不可欠です。現状の日本酒業界にも、「唎酒師」や「サケ・デュプロマ」などの資格制度としてのソフト面は存在していますが、そこには外国人から最も「憧れ」を持って仰ぎ見られる精神性の部分が欠けています。ちなみに、外国人にとって最も「憧れ」の対象となっている日本文化は、「禅」でしょう。スティーブ・ジョブズ、マイケル・ムーア、フィル・ジャクソン、エリック・シュミット・・・など、世界の各界の一流のリーダーたちが、「禅」に憧れ、これを実践しているのですから。そして、この「禅」をベースとして日本に誕生したものが、「茶道」や「華道」などの「道」の概念であり、「茶道」や「華道」が海外においてもしっかりと根を張り、広がり続けているのは、憧れの対象である「禅」をベースにしているからであると考えられます。そして当然「酒道」のベースにも「禅」があります。資格ではなく、あくまで「道」としての「酒道」という存在は、「日本酒・百年の計」を考えるならば、国内においても海外においても、いまこそ最も必要とされるものであると考えています。
 「酒道」の復活は、日本酒を媒介として幸せに成長し続ける個人を増やし、現代の忌まわしき4つの流れを押しとどめ、かつ日本酒文化を国内外に広め、百年後二百年後にも日本を代表する伝統文化として、芸道として、世界中から仰ぎ見られる存在となるであろうことを、私は確信しています。しかしまだまだ現時点では、ほんの小さな一歩を踏み出したに過ぎません。まずはこのホームページの一連のPDFや動画が、そのほんの小さな一歩なのです。もし、私たちの目指す方向性や活動にご賛同いただけますようでしたら、是非とも私たちの仲間になっていただけましたら幸いです。
令和2年12月吉日
「酒道黒金流」開祖竹村昭彦