人づきあいが好きなあなたでも、近年はパソコンやタブレットやスマホを使ったSNSなどを活用してのコミュニケーションが増えているのではないでしょうか。現代では、世の多くの人々がコミュニケーションのために、人間関係のつながりのために、ネットなどのSNSを使用しているのが現実です。しかし、人間関係には間違いなく、ネットのみでは到達不可能な領域が存在しています。広く浅くならネットのみで充分かもしれませんが、もう少し深い人間関係を構築するには、膝を突き合わせ、面と向かって対話することが、いつの時代であっても、絶対的に必要なのです。誤解しないでいただきたいのは、ネット系コミュニケーションを批判したい訳ではありません。もちろん今の時代、ネット系はもはや必要不可欠です。しかしそれだけでは、結局真の人間関係は構築できない、と言いたいのです。既にこれに気づいている方々は、「オフ会」と称し、ネット系以外にも実際に現実の世界での集いを開催したりしているのです。
そして、そんな人々が集う場の空気を和ませ、さらに人間関係を良好にする潤滑油として、やはりお酒が必要不可欠であるといえます。ちなみに「シンポジウム」という言葉は、現在は「討論会」的に使われていますが、元々の語源はギリシャ語で「ともに(シン)酒を飲む(ポシス)」という意味の「シンポシオン」から出た言葉なのだそうです。古代ギリシャ文化を開花させた大きな要因のひとつが、この「ともに酒を飲み」語り合うという行為であったという事実は、特筆に値するでしょう。また、そんな大昔の事例を挙げるまでもなく、皆さんにも何度も経験があるはずです。現在親友と呼べるほど仲の良い友人と、いつからそんなに仲良くなりましたか?あるとき痛飲し、美味しいお酒を酌み交わして盛り上がり、それから一気に仲良くなった・・・というパターンが多いのではないでしょうか?お酒には、初対面の人間同士を一晩で急激に仲良くさせ、まるで何十年来の親友のような関係を構築させる、魔法のような力があるのです。「酒場放浪記」で大人気の吉田類さん(高知県仁淀川町出身)は、「酒縁社会」という言葉をよく使われます。かつて「無縁社会」という言葉が流行ったことがありましたが、それに引っかけて、見知らぬ者同士が同じ酒場でたまたま出会って時間を分かち合う縁を、「酒縁社会」と称しているのです。土佐の高知では今でも、見知らぬ者同士が隣合わせて気が合うと、杯が進むうちにもう「親友」、というシーンをよく見かけます。まさにこれぞ「酒縁社会」でしょう。つまり、今の時代ネット系コミュニケーションも不可欠でしょうが、真の人間関係を構築するには「飲みニケーション」もまた必要であるということです。ある意味でお酒は、ネットに勝る真のコミュニケーションツールであるといえるでしょう!
そして、そんなお酒にもいろいろな種類がありますが、それぞれに最も似合うシーンというものがあります。ビールや発泡酒などは、大勢でワイワイ飲むというシーンが最も似合うでしょう。ウィスキーやブランデーなどの蒸留酒は、1人でジックリ飲むというシーンが最も似合います。ワインは、2人きりや少人数で語り合いながら飲むというシーンが最も似合いますが、そこにはソムリエなどのワインをサービスしたりするスタッフという「他人」が、大抵の場合存在しています。日本酒も、2人きりや少人数で語り合いながら飲むというシーンが最も似合うお酒ですが、こちらは「他人」を媒介せず、お互いが「差しつ差されつ」という飲み方が一般的でしょう。ちなみに「水入らず」という言葉の由来にはいくつかの説がありますが、一説に、相手に自分の杯を渡す際に水で洗ってから渡す「盃洗」という作法があり、これをしなくてもいいような親しい関係を「水入らず」と言ったそうなのです。そして、あらゆる酒類の中で、「最も人と人との距離を近づける力が強いお酒は日本酒である」と断言させていただきたいと思います。隣り合わせて肩寄せあって、差しつ差されつ酌み交わす日本酒の、何と美味しく何と幸せなことか!隣と肩がぶつかり合うほどの小さなカウンターのみ10席程度のお店で、毎晩日本酒の1升瓶が何本も出るようなお店が、日本中にどれほどたくさん存在していることか!日本酒は他のどの酒類よりも、人と人との距離を近づけながら、より盛り上がり、よりたくさん消費されるという傾向が強いお酒なのです。ちなみに、中でも土佐の高知は、さらに日本一と言ってもいいほど人と人との距離をより親密に近づける酒文化の伝統を持っています。「皿鉢料理」を取り分け合い、席も移動し合って共有し、杯も共有して酌み交わす返杯・献杯、「はし拳」「可杯(べくはい)」などのお座敷遊びも全て杯を共有し合うなど、人と人との距離を近すぎるほど近づけるのです。
こうして考えてみますと、あらゆるお酒の中で、最も深く真の人間関係を構築する場面にふさわしいのは日本酒であり、つまり日本酒こそ、ネットに勝る最強のコミュニケーションツールであるといえるでしょう。つまり、人づきあいの潤滑油として日本酒を上手に活用することで、あなたの幸せの発見回数は格段に増えていくことになります。そして「今この瞬間の幸せ」に気づく力が養われ、あなたの人生は幸せに導かれていくことになるのです。