【門前編】過去も未来も変えられる?!タイムマシンの入手方法!
今回のタイトルを見て、「酒道」と何の関係があるのか、と思われたかもしれません。また、「タイムマシンなんて、SF映画や漫画の世界だけの話じゃないの?」と思われたかもしれません。しかし、実は今回のテーマは、SF映画や漫画の話ではなく、極めて現実的なテーマであり、理想の未来を目の前に引き寄せてくる可能性に満ちているという意味では、「酒道」にとっても大変大事なテーマなのです。と、いうことで今回は、「過去も未来も変えられる?!タイムマシンの入手方法!」というちょっと一風変わったテーマで、お伝えしたいと思います。
【タイムマシンの発案者H・G・ウェルズの言葉】
子供の頃、「ドラえもん」などの漫画やアニメ、SF小説や映画などを観て、「タイムマシンが欲しい!」と思った記憶はないでしょうか?私は子供の頃、友達と「ドラえもん」に出てくる未来道具の中で何が欲しいかという話題になったとき、「やっぱし最強なのはタイムマシンや!」といつも語っており、本気で欲しがっていたという記憶があります。なぜ最強かというと、過去や未来を自在に行き来し、思い通りに過去も未来を変えられるのがタイムマシンですから、どんな強力な未来道具もコレにはかなわないと思ったからです。ところで、そんなタイムマシンという概念を発案した人をご存じでしょうか?イギリスのH・G・ウェルズさんというSF作家が1895年に発表した「タイムマシン」という小説に、初めて登場するのだそうです。つまりこのH・G・ウェルズさんこそ、タイムマシン(という概念)の発案者であると言えるでしょう。では、さらにそんなウェルズさんが、次のような言葉を残しているという事実をご存じでしょうか?
「私達はみんな、タイムマシンを持っている。」
SFに登場する夢のような装置の中でも、夢度合いがピカイチともいえるタイムマシンの発案者が、こんな言葉を残すなんて、いったいこれはどういう意味なのでしょうか?実はこの言葉には続きがあります。「私達はみんな、タイムマシンを持っている。過去に戻すのは思い出。そして前に進めるのは夢です。」と続くのです。「そりゃあ思い出をたどれば過去に戻ったような気になるし、夢を持てば未来に行ったような気になるよね!な〜んだ、そんなことか!」...と思われたかもしれませんが、ちょっと待った!もう少し深く、突っ込んで考えてみましょう。まずは過去から。確かに、過去に戻って人生をやり直すことは不可能でしょう。しかし、たとえば過去の失敗を失敗のまま放っておかないで、歳月の中で「その意味」を変えることができれば、それはもはや失敗ではない、つまり過去の失敗を成功の種にすることはできるわけであり、それができれば過去を変えることができたのと同じことになるのではないでしょうか。どんなやり直したいような過去の失敗であっても、その意味を変えることはできる、いい思い出に変えることはできるのです。次に未来も、鮮明な夢をリアルに思い描くことによって、理想の未来を引き寄せてくることは可能です。つまり未来も、実は理想通りに変えることができるということなのです。ならば、確かに私達はみんな、タイムマシンを持っているのと同じだと言えるのではないでしょうか。実際に、ウェルズさんがどういう意味でこの言葉を語ったのかは知りませんが、私はこういう意味として受け取りました。
【タイムマシンはどこにある?】
さらにさらに深く突っ込んで、今度はタイムマシンについて考えてみましょう。タイムマシンとは、いったいどういう装置なのでしょうか。タイムマシンを使えば、時間をさかのぼって過去に行き、そこで起きる事態に関わって、その後の未来を変えることができるわけです。今、私達の目の前で起こっている事態は「結果」であり、その「結果」が生まれる「原因」が、過去のどこかに存在しているはずです。ですから、過去にさかのぼって、そこで新たな「原因」をつくれば、そこから生まれる「結果」は変わってきます。それによって、今の現実も、これからの未来も、変えることができるというわけです。つまりタイムマシンとは、過去にある「原因」を入れ替えて、今ここに生まれている「結果」を変えるという装置であると言えるでしょう。ここで、じっくりと考えてみてください。「原因」が「結果」を生み出すのならば、未来を変えるには、わざわざ過去に戻らなくても、今ここで、未来を変える新しい「原因」をつくり出せばよいのではないでしょうか。過去にではなく、現在に新しい「原因」をつくることにより、私達は新しい「結果」をつくり出すことができる、理想の未来を創出することができるのです。これはつまり、私達はみんな、タイムマシンを持っているということなのです!「何だ、そんなことなら知っていたし、あまりに当たり前すぎて、簡単なことじゃない!」と、思われるかもしれません。では、それがもし本当に簡単なことならば、多くの人達がそうやって未来を変えることに成功していないのは、なぜなのでしょうか。
理屈では理解できたとしても、現実には多くの人が未来を変えることができません。なぜなら人は、放っておくと「これまで生きてきたとおりに」今を生き、これからもそのように生きてしまう生き物だからです。今ここで、新しい「原因」をつくり出すことは、実際は想像以上に困難なことなのです。それを困難にしている理由のひとつが、まず「私達はみんな、タイムマシンを持っている。」ということを、知らないからです。しかし、皆さんはもう知ってしまいましたね。ここは、クリアしたことにしましょう。しかしまだ、それを困難にしている理由が、もうひとつあるのです。それは、「タイムマシンを持ってはいても、それがどこにあるのか知らない。」からです。では、タイムマシンはどこにあるのでしょうか?
【結果に追われる人、原因をつくる人】
未来を変えることができる人と、未来を変えることができない人の決定的な違いは、住んでいる世界が違うという点です。それは、たとえ同じ日本国内で、同じ商売をしていたとしても、全く異なる宇宙に住んでいるのと同じくらい、決定的に違う世界に住んでいるのです。ではその違いの具体例を、酒販店の事例で見てみましょう。
まずA酒店。朝、店を開けて雑用をしていると、山積みになった資料の中から、取引先酒問屋から送られてきた封筒が見つかる。あ、そういえばもう2週間以上前に届いていたのに、封も開けてなかったな。封を開けると「夏の生酒」のパンフレットが入っている。そうだ、夏季限定の「船中八策・零下生酒」を欲しがっていたお客様がいたな。注文しなきゃ。酒問屋に注文の電話をすると、既に完売だと告げられる。思い出した!そういえば去年もあの酒は早期に完売していて、手に入らなかったんだ。チクショー!またかよ!...しかし、店員のC君は、本当に使えないヤツだよな。今日も出勤時間なのにまだ来てないよ。まったく最近の若いヤツは!...午後、取引先の居酒屋に「夏の生酒」の商談に行くと、「もう別の酒屋に注文しちゃったよ」と告げられる。長年の付き合いなのに、何て薄情な居酒屋だ!気分が落ち込む。どうしてこう、毎日毎日、ロクなことがないんだろう。だいたい最近、近所のスーパーに酒販免許が下りたり、酒ありコンビニがドンドン出店したりするから、ウチの売り上げは下がりっぱなしになるんだよ!...こうして重い気分のまま、A酒店の1日が終わります。
次にB酒店。朝、店を開ける。今日は午前中の時間が比較的空いているから、間もなく届く「夏の生酒」の手書きPOPを書いておこう。おっと、夏の後半戦用に「夏純米・夏吟醸」の注文もしておかなきゃ。去年は「司牡丹・夏純吟」が手に入らなかったから、今年は早めに注文しておかなきゃな。この酒を欲しがりそうな顧客リストもチェックしておこう。...そういえば店員のD君、最近元気がないなあ。何か悩みでもあるのかもしれない。今夜は飲みに誘って、ちょっと話を聞いてみるか。...この前、取引先の居酒屋に「夏の生酒」の商談に行ったけど、注文が去年より減らされていたな。案内チラシの手を抜いたのが原因かもしれない。次の「夏純米・夏吟醸」で挽回しなきゃならないから、案内チラシの内容やキャッチコピーはどれも自信作ばかり。これなら、午後の商談もバッチリだろう。そういえば最近また近所のスーパーに酒販免許が下り、酒ありコンビニもオープンしたな。ウチの周囲の酒売り場は、サイレントチャネルだらけだ。今後は、ますます酒専門店の出番が増えるってもんだ!全国の地酒銘酒だけじゃなく、要説明商品である「こだわり食品」も、もっと増やしてみるか。
A酒店とB酒店の違いは、何でしょう?A酒店は、起こった出来事の後追いを繰り返しています。つまり、次々と目の前に出現する「結果」を見て、悶々としているのです。一方B酒店は、結果をもたらす「原因」に意識が向いています。自らが願う「結果」をつくり出すために、どのような「原因」をつくればいいのかを、前もって考えているのです。つまり、A酒店は「結果に追われる人」、B酒店は「原因をつくる人」なのです。あなたはどちらのタイプに近いでしょうか?
A酒店とB酒店の生きている世界の違いを、さらに考えてみましょう。実はこの世の中には、2つの「時の流れの世界」があるのです。1つの時の流れの世界が「結果の流れの世界」です。そこでは、次々と「結果」が現れます。A酒店が生きていたのがこの「結果の流れの世界」です。もう1つは「原因の流れの世界」。そこでは「結果」に先行する「原因」が、次々とつくり出されているのです。B酒店は、この「原因の流れの世界」を生きていたことになります。これは、わずかな違いに見えるかもしれません。しかし、この2人は、同じ時間、同じ場所を生きていても、実は次元が違う2つの宇宙、異なる時間の流れを生きているようなものなのです。
【タイムマシンが存在している在り処とは?】
勘が鋭い方は、もうお気づきでしょう。そうです。タイムマシンは、「結果の流れの世界」には存在しません。「原因の流れの世界」にしか存在しないのです。ですから、もしあなたが、今「結果の流れの世界」を生きていると感じるならば、「原因の流れの世界」に飛翔しなければ、タイムマシンを見つけることは不可能なのです。「結果に追われる人」から「原因をつくる人」に変わらなければ、永遠にタイムマシンとは出会えないということなのです。
さあ、これでタイムマシンの在り処も判明しました。これでもう大丈夫...と、そう簡単にうまくはいかないでしょう。タイムマシンの在り処が分かったとしても、あなたがその場所まで行かなければ、タイムマシンに乗ることはできないからです。それはつまり、今すぐ行動に移すということです。どんな小さなことでもいいですから、今すぐに行動することです。あなたの望む未来の「結果」をつくる、小さな「原因」を、1つでもいいからつくることです。あなたがもし「結果の流れの世界」を生きていると感じている人なら、毎日毎日、次々に現れる現実に振り回されていることでしょう。既に変えることのできない塊のような「結果」が、次から次に目の前に現れ、新たな行動を起こすヒマなどない、小さな「原因」をつくるヒマなどないと感じているかもしれません。そしてたいていは、この一言を残して、「結果の流れの世界」に埋没していくのです。「時間がない!」...。
しかし、時間とは、あるとかないとかではなく、つくるものなのです。時間とは、つくろうとしない限り、永遠に「ない」ままです。ですから、「今は忙しいから、あとで」とか、「時間ができたときに、いずれ」とか言い訳を考えるヒマがあったら、歯をくいしばってでも、睡眠時間を削ってでも、少しでもいいから時間をつくり、あなたの望む未来の「結果」をつくる、小さな「原因」を、1つでもいいからつくってみる、そんな一歩を踏み出してみることです。そして、その小さな一歩は、「結果に追われる人」から「原因をつくる人」への飛翔の、大いなる一歩なのです。そんな一歩一歩を、積み重ね積み重ねしていくうちに、あなたを日々振り回していた「結果」の激流はいつしか小川となり、「原因」の小川はいつしか大河となり、そしてある日、ふと気づくことでしょう。子供の頃、夢にまで見た最強の道具、タイムマシンが目の前にあることに...。
(参考文献:「未来は変えられる!〜試練に強くなる『カオス発想術』〜」 高橋佳子 著 三宝出版 2015年9月30日発行 1,500円+税)
【ウィズ・コロナ、アフター・コロナを逆手に取って「原因の流れの世界」へ!】
この度のコロナ禍は、私たちのこれまでの日常を破壊しました。あらゆる仕事が、あらゆる業界が、これまでどおりではいられない時代になったともいえます。人は、放っておくと「これまで生きてきたとおりに」今を生き、これからもそのように生きてしまう生き物だと述べましたが、コロナ禍は、そのような生き方ではもはや生き残ることは難しいということを、私達に気づかせてくれたともいえるでしょう。突然話は変わりますが、かのアイザック・ニュートンがケンブリッジ大学の学生だった頃、ヨーロッパではペストが大流行し、大学が閉鎖されてしまったといいます。そしてニュートンは、大学を離れ長期間故郷に戻ることを余儀なくされてしまうのです。通常ならば、大学生であるニュートンにとって、これは最悪の出来事でしょう。しかしニュートンは、「結果の流れの世界」に埋没した「結果に追われる人」のままではいませんでした。ペストの大流行・大学の閉鎖という最悪の事態を逆手に取り、忙しい大学生活の雑事から離れて、じっくりと思索を深める大チャンスだと受け取ったのです。そして、ペスト禍を逃れて田舎に戻っていた1年半ほどの間に、「微分積分法」、「プリズムでの分光」、「万有引力の法則」という、後に「ニュートンの三大業績」と呼ばれることになる偉大な発見の全てを、何とこの期間に成し遂げるのです。コロナ禍において、同じように最悪の出来事を体験されている方もいらっしゃるでしょうが、ニュートンほどの大発見はできなくとも、「最悪」を逆手に取って、「最高」に変えることは、決して不可能ではないということなのです。
飲食店比率の高い司牡丹酒造にとっても、コロナ禍は最悪の出来事でした。全国の飲食店が長期にわたって時短や閉店となり、あらゆる日本酒イベントや宴席や県外出張が中止となり、売上が半分以下になった月もあったほどです。そんな最悪の出来事の中で、私は司牡丹酒造の社長として、「結果の流れの世界」に埋没した「結果に追われる人」のままでいるわけにはいきませんでした。そして、望む未来の「結果」をつくるための小さな「原因」を、いくつも実践に移してきました。その中のひとつが、「酒道黒金流」だったのです。イベントや宴席や出張が無くなった分、ニュートンではないですが時間はたっぷりありましたので、じっくりと思索を深め、「酒道黒金流」の原案を一気に書き下ろし、次々に動画を撮影していき、ホームページを立ち上げたのです。「酒道黒金流」は、まだまだ望む未来の「結果」をつくるまでには遠くおよびませんが、小さな「原因」はつくれたという自負はあります。きっと将来、未来の日本酒の可能性を、目の前に引き寄せてくる「原因」になるであろうと確信しているのです。皆さんも、もし今、コロナ禍などの影響で、自身が「結果の流れの世界」に埋没し「結果に追われる人」になっていると感じられるようでしたら、その状況を逆手に取って時間をつくり、未来の可能性を目の前に引き寄せてくるような「原因」を、小さな「原因」を是非ひとつでもつくってみてください。アフター・コロナとなったとき、より多くの皆さんと「原因の流れの世界」にてお会いできますことを、心から念願いたしております。
【何気ない日常でこそ、「原因をつくる人」に!】
そして、もう一点だけどうしても追加でお伝えしたいことがあります。ここまで述べてきた内容、つまり「結果に追われる人」から「原因をつくる人」になるための行動を、実際に実践しようとした場合、家族との団らんなどの何気ない日常が顧みられなくなるという事態が起こりがちなのです。時間とは、つくろうとしない限り永遠に「ない」ままであるというのは事実ではありますが、だからといって、何気ない日常を蔑ろにしていいというわけではありません。「結果に追われる人」から「原因をつくる人」になるというのは、何も仕事のためや自分のためだけのことではないのです。家族との団らんなどの何気ない日常への対応もまた、「結果に追われる人」にならず、「原因をつくる人」になるということが大切なのです。むしろ難しいのは、そして大切なのは、こちらの方であるといえるでしょう。何気ない日常というものは、「あって当たり前」と思われがちですから、意識することが難しいため、気づかないまま、「結果の流れの世界」のままでほったらかしにされやすいのです。しかし、もし家族との団らんなどの何気ない日常が無くなってしまったなら、仕事や自分の夢も何もあったものではないでしょう。無くなってから気づいて後悔しても、もう遅いのです。家族との団らんなどの何気ない日常にこそ、望む未来の「結果」をつくる小さな「原因」を、日々コツコツとつくっていく......これが実は最も難しく、最も挑戦しがいのある、そして最も素晴らしいことなのです。
仕事や自分の夢だけに突っ走って「原因をつくる人」になるのではなく、仕事や自分の夢についてと同時に、家族との団らんなどの何気ない日常についても、この両輪ともに「結果に追われる人」から「原因をつくる人」になるということ、このバランスが大切なのです。それは、「進歩」と「調和」のバランスが大事であるともいえるでしょう。外に向かってガンガン進んでいくべきときもあるでしょうが、それが行き過ぎたと感じたなら、家庭内や社内や自身の内面の調和を図る方向へとシフトする。それらの内に対する調和が取れたなら、再び外に向かって進んで行く。このようにバランスを考えながら、仕事にも家庭にも、外にも内にも、望む未来の「結果」をつくる「原因」をつくりだしていく...。これこそが、最強のタイムマシンの使い方であるといえるでしょう。