【門前編】新時代を生き抜くために、「系」が見える人間になる!

First part of the gate

新時代を生き抜くために、「系」が見える人間になる!

前々回にて、「和食系飲食店が『withコロナ時代』を生き抜く方法!」について、語らせていただきましたが、今回はその内容をベースにさらに間口を広げ、「新時代を生き抜くために、『系』が見える人間になる!」というタイトルで、お届けしたいと思います。これからの新時代は、「withコロナ時代」であり、「価格上昇時代」であり、「人口減少・少子高齢化時代」であり、「経済縮小時代」であり……あらゆる環境が年々さらに厳しいものになっていくことは間違いありません。そんな時代を生き抜き、皆さんのあらゆる仕事、皆さんのあらゆる組織、皆さんのあらゆる人間関係を、維持・発展させていくためには、一言で言えば「『系』が見える人間になる」ことが最重要であると、私は考えているのです。 【日本酒メーカーの商品流通の「系」】 では、「『系』が見える」とはどういうことなのか、日本酒メーカーのビジネスを事例として取り上げてみましょう。「図➀」を参照しながらご覧ください。まず日本酒メーカーの商品の流通は、「日本酒メーカー→卸問屋(1次問屋・2次問屋)→酒販店→(料飲店)→顧客(一般消費者)」という流れを基本としています。「1次問屋」というのは大卸で、そこを経由して地方の小規模な「2次問屋」に流れるという場合もあるということです。「酒販店」からは業務用として「料飲店」に流れて、そこで「顧客」に飲んでいただくというパターンと、「酒販店」から小売りで「顧客」に購入していただくというパターンがあるということです。ちなみに「顧客」とは、「関係性があり、リピートしてくれるお客様」のことですから、その外側には、まだ関係性もなく、購入もしていない見込客や新規客、つまり「一般消費者」がいるということです。 さらに、この基本の流れ以外にも、「日本酒メーカー→酒販店」という卸問屋を通さない直販ルートや、ごく一部ですが「日本酒メーカー→料飲店」というルートも存在しており、また近年は通販も盛んで、「日本酒メーカー→顧客」という直々販ルートがあります。ネット通販などでは一般消費者も購入できますから、「日本酒メーカー→一般消費者」というルートもあることになります。また、卸問屋が料飲店に直接商品を卸したり、さらにネット通販などで顧客や一般消費者に直接販売するというルートも、近年では存在しています。このような一連の流れは、「商品流通の『系』」であるといえます。つまり「系」とは「システム」であり、世の中はいろいろな物事がつながって、ひとつの「系」として存在し、そこで連鎖や循環が起きているということです。ちなみに「循環」とは、「商品流通の『系』」とは逆のルートで商品代金の流れ、つまり「おカネの『系』」があり、最終的に日本酒メーカーに戻ってきて、その利益でまた商品が開発されるという、「循環」が起こっているともいえるということです。たとえば、地球上の動植物や微生物が織り成す「生態系」もひとつの「系」であり、そこで様々な連鎖や循環が起こることで「系」が成り立っているのです。 <図➀>日本酒メーカーの商品流通の「系」
【日本酒メーカーの価値伝道の「系」】 しかし、この「商品流通の『系』」だけで、ビジネスが成り立っているわけではありません。いくらモノがスムーズに流れたとしても、そのモノの「価値」が「系」を通して伝わっていかなければ、喜んでおカネを払ってもらえない、「おカネの『系』」が循環しない、モノは売れないということです。つまり、この「価値伝道の『系』」が大変重要であり、これが見えていないとお話しにならないということなのです。では、その伝道すべき「価値」とは何でしょうか?「価値」には、「認知的価値」と「情緒的価値」の2つがあります。「認知的価値」とは、効果・効能・機能性であり、頭で理解できる価値のこと。一方「情緒的価値」とは、感性価値とも言われ、「買いたい!」「この店が好き!」などの気持ちを生むような、人の感性に訴える価値のことです。「感性」というと美的・芸術的な感覚で捉えられがちですが、そういう意味の「感性」ではありません。そして、「買いたい!」等のポジィティブな情動を伴う感性にいかに働きかけるかは、どのような情報を与えるかがポイントになります。近年は消費者の求めるものが、「モノの豊かさ」よりも「心の豊かさ」にますますシフトしていく傾向があります。モノが売れなくなるという意味ではなく、モノを買う理由も、心の豊かさを求めて買うようになるという意味です。「モノの豊かさ」は「認知的価値」に、「心の豊かさ」は「情緒的価値」に対応しているといえますから、今後はどんな業界であっても、「認知的価値」のみでは「買いたい!」という気持ちはますます生まれにくくなっていき、「情緒的価値」がますます重要になっていくでしょう。そして、そんな「情緒的価値」をしっかりと「価値伝道」していくためには、「心を動かす」ことと、「特別な存在になる」ということの両面から考えていくことが重要になります。「心を動かす」とは、「買いたい!」という気持ちになってもらう、つまりお客様を「動機づけ」するということです。「特別な存在になる」とは、他社の商品とは違い「特別だ!」と感じてもらうことですから、そのためには「絆づくり」をすることが必須であるということです。前々回の「和食系飲食店が『withコロナ時代』を生き抜く方法!」でも、「お客様に対する『動機づけ』と『絆づくり』を徹底することができれば、『withコロナ時代』においても商売は安泰であるといっても過言ではないでしょう。」と書きましたが、これからの時代において、あらゆる仕事や組織や人間関係を維持・発展させていくためには、もはや成すべきことはこの道しかない、「動機づけ」と「絆づくり」の徹底しかないと、私は確信しているのです。 さて、では「日本酒メーカーのビジネスの事例」に戻って、「価値伝道の『系』」を考えてみましょう。「図➁」を参照しながらご覧ください。まず日本酒メーカーの価値の伝道は、商品の流通同様、「日本酒メーカー→卸問屋(1次問屋・2次問屋)→酒販店→(料飲店)→顧客→一般消費者」(※「顧客→一般消費者」は、いわゆる口コミ)という流れを基本としています。そして本来ならば、商品の流通とともに、しっかりと価値が伝道されていかなければなりませんが、この流れの中で現実には「伝言ゲーム」のように、次第に価値が減少してしまっているという点が大きな問題なのです。(※次第に矢印が細くなることでこれを表現。)日本のあらゆる業界の「いいモノ」を作っている中小メーカーが、ドンドン消えていってしまっている最大の原因は、「価値」が「系」を通して伝わっていないという、この点にあるといっても過言ではないでしょう。そこで日本酒メーカーの価値の伝道は、「日本酒メーカー→卸問屋」のみならず、「日本酒メーカー→酒販店」「日本酒メーカー→料飲店」「日本酒メーカー→顧客」「日本酒メーカー→一般消費者」という、5つの「価値伝道の『系』」を考えなければならないということになるわけです。そして、それぞれで伝道すべき価値は、原料米や造りやスペックなどの「認知的価値」のみならず、「買いたい!」という気持ちを生む感性に訴える「情緒的価値」に重点を置いて伝道しなければなりません。さらに、そんな「情緒的価値」をしっかりと伝道していくために、「心を動かす」ことと「特別な存在になる」ということの両面から考えていく、つまり「動機づけ」をすることと「絆づくり」をすることが重要になるということなのです。 <図➁>日本酒メーカーの価値伝道の「系」
ではここで、日本酒メーカーの5つの「価値伝道の『系』」を、「動機づけ」と「絆づくり」の観点から見てみましょう。まず「日本酒メーカー→卸問屋」ですが、ここはメーカーの営業マンらが通常は定期訪問しており、自社商品の価値を伝道し、仕入れていただくための「動機づけ」を日々行っていることでしょうし、卸問屋の様々な部署の方々との「絆づくり」もしっかりと行われていることでしょう。ただし、日本酒メーカーの価値伝道は原料米や造りやスペックなどの「認知的価値」に偏る傾向があるため、「買いたい!(=仕入れたい!or売ってみたい!)」という気持ちを生む、感性に訴える「情緒的価値」をもっと重視していくべきでしょう。また、「絆づくり」についても、単純に「親しくなる」というレベルを超えて、たくさんのメーカーの中で「特別な存在になる」ことを目指して、しっかり意識しながら活動していくべきでしょう。次の「日本酒メーカー→酒販店」についても、ほぼこれと同様であるといえるでしょう。しかし、取引先酒販店が増えれば増えるだけ、定期訪問は難しくなり、それに伴い「動機づけ」も「絆づくり」も疎かになってしまいます。定期訪問ができなかったとしても、「動機づけ」や「絆づくり」の活動ができるような仕組みを考えておくべきでしょう。続いては「日本酒メーカー→料飲店」ですが、ここを定期訪問しているという日本酒メーカーは、かなり少なくなります。こちらについては、重要取引先については定期訪問をしながら、その他の店についてはやはり、訪問しなくても「動機づけ」や「絆づくり」の活動ができるような仕組みを考えておくべきであるといえるでしょう。次に「日本酒メーカー→顧客」については、様々な日本酒を楽しむ会などを開催したりしながら、ニュースレターやメルマガやSNSなどで「動機づけ」と「絆づくり」をしっかりと行うことです。ホームページなどでのネット通販も駆使し、直接販売するルートも構築しておくべきでしょう。「日本酒メーカー→一般消費者」については、SNSやホームページでの「動機づけ」を行い、購入者には直ぐに「絆づくり」活動を行う準備をしておくべきであるといえるでしょう。 【司牡丹酒造の価値伝道の「系」】 ここで司牡丹酒造の場合の、5つの「価値伝道の『系』」を見てみましょう。「図➂」を参照しながらご覧ください。まず「司牡丹酒造→卸問屋」ですが、やはり営業マンらが定期訪問しており、司牡丹商品の価値を伝道し、仕入れていただくための「動機づけ」を日々行っていますし、卸問屋の様々な部署の方々との「絆づくり」も行われています。しかし価値伝道については、まだまだ「認知的価値」に偏る傾向があり、「買いたい!(=仕入れたい!or売ってみたい!)」という気持ちを生む、感性に訴える「情緒的価値」をもっと重視していかなければならないと思っています。また、「絆づくり」についても、たくさんのメーカーの中で「特別な存在になる」ことを目指して、もっとしっかり意識しながら活動していかなければならないでしょう。ちなみにメインの取引先である「日本名門酒会」という地酒販売組織の本部となっている、東京の株式会社岡永さんに対しては、営業マンらとともに社長である私も、直接「動機づけ」や「絆づくり」の活動を行っているといえるでしょう。 次の「司牡丹酒造→酒販店」については、営業マンらがある程度は訪問してはいますが、前述のメインの取引先である「日本名門酒会」という地酒流通販売組織には、全国約1,700店に及ぶ加盟酒販店があるため、これらすべてを訪問することは到底不可能です。そのため、「司牡丹時報(ボタンタイムス)」という情報紙を隔月刊で発行しています。これは、「読むと元気になる!お客様の豊かさに貢献する、日本名門酒会加盟店のための情報紙」と銘打ったもので、全文私が執筆しています。A3サイズ両面印刷で、表の面は「巻頭提言」で、主に加盟店の皆さんにとって役立つホットな情報や、いま成すべきことなどを提言しています。これは、加盟店の皆さんに繁盛していただきたいという想いで執筆しているものですが、司牡丹酒造から見れば、加盟店の皆さんとの「絆づくり」に大いに貢献しているといえるでしょう。裏面は主に最新の商品情報やトピックなどが掲載されており、もちろん「情緒的価値」を重視して執筆していますから、商品仕入れの「動機づけ」に大いに貢献しているといえます。ちなみに関東統括部長として関東在住の営業マンが1名おり、関東の有力な加盟店については定期訪問しています。 <図➂>司牡丹酒造の価値伝道の「系」
続いては「司牡丹酒造→料飲店」ですが、地元高知県内の有力な料飲店や、県外についても有力な料飲店などには、私や営業マンらが訪問はしていますが、こちらも全国に渡って数が多いため、すべてを訪問することはもちろん不可能です。現在ここに対して行っている活動としては、前述の「司牡丹時報」を通して、つまり加盟店を通して、料飲店繁盛の情報やヒントを発信したりしています。また、後述の「顧客」や「一般消費者」に対して行っている様々な活動が、「料飲店」の方々に対しても流れており、彼らに対する「動機づけ」や「絆づくり」に少しは貢献しているといえるでしょう。 次に「司牡丹酒造→顧客」については、様々な日本酒を楽しむ会などを各地で開催したりしながら、まずは紙媒体として、無料の隔月刊情報紙「オトゴチ(土佐発オトナノご馳走)」(~ワクワクする旬の酒・食・文化マガジン~)を、全国の顧客約5,000人にお届けしています。この情報紙本体には商品の紹介などはなく、顧客の「特別な存在になる」ための「絆づくり」を実践する媒体であり、顧客が一般消費者を紹介したくなる仕組みも備わっています。また、別冊の「お取り寄せカタログ」にて、「心を動かす」商品紹介が成されており、商品購入に至る「動機づけ」となっているのです。そしてメルマガ「日本の旬を10倍楽しむ秘訣!」を毎月月末、全国の顧客約1,000人に配信しており、旬の楽しい情報で「絆づくり」を行い、メルマガの最後で「その旬の食の美味しさをさらに倍増させる商品」を紹介し、「動機づけ」にも貢献しています。さらにここから後は、一般消費者向けであるともいえますが、「老舗日本酒蔵元『司牡丹』社長が語る裏バナシblog『口は幸せのもと!』」というブログを毎日更新しており、「竹村昭彦Facebook」にも同内容が毎日掲載されていますし、「旬どき・うまいもの自慢会・土佐」のブログにも、土佐の旬のうまいものと司牡丹の旬の日本酒の相性などについての情報が毎月掲載されており、これらは「動機づけ」や「絆づくり」に貢献しているはずです。また、この「酒道黒金流」のサイトも、同様の効果があるといえるでしょう。さらに他にも、TwitterやInstagramなどのSNSの配信も行っています。 さて、こうして司牡丹酒造の5つの「価値伝道の『系』」を眺めてみたとき、「司牡丹酒造→料飲店」の働きかけがやや不足していることに気づかれたのではないでしょうか。実は、料飲店に対してもっと戦略的に「動機づけ」と「絆づくり」をしっかりと働きかけるような方法を、現在模索中です。つまり「『系』が見える」とは、こういうことに気づくことができるということなのです。このような「系」の因果関係は、意識していても通常はなかなか気づくことができないものですが、今回のように詳しく様々な「系」の因果関係の図を書いてみることによって、足りない部分が見えてくるのだといえるでしょう。 【「『系』が見える」とは?~「船中八策」の「首かけミニ冊子」の事例~】 さらに、別の視点からも、「『系』が見える」とはどういうことかについて、例を挙げてみましょう。司牡丹酒造の大定番の看板商品に、「船中八策」(超辛口・純米酒)という日本名門酒会のオリジナル商品があります。この商品の1升瓶と4合瓶商品には、発売当初から「首かけミニ冊子」が付けられています。これは元々は、「船中八策」という言葉の意味が分からないだろうということで付けられたもので、「坂本龍馬が船の中で考え出した8つの策」であることの解説や、坂本龍馬についての紹介などが詳しく記載されています。そして、発売から30年以上が経過し、今や司牡丹のトップブランドに成長し、業界では知らぬ人がいないほどの人気商品となっていますが、資材や燃料費などの高騰による値上げ問題が発生し、経費削減がかまびすしくなった際、「この『首かけミニ冊子』は、もういらないのではないか」という声が、社内からあがってきたのです。実際、結構な印刷費もかかっており、また瓶の首にかけるという作業を行う人件費もバカにはできませんから、こういう声があがってきても仕方がないのかもしれません。しかも、地元の酒販店の方々や料飲店の方々に訊ねてみたところ、「無くても問題ない」、「実際、捨てている」、「もう役目は終わったんじゃない?」という声だらけでした。さて皆さんなら、どう思われますか? ここで「首かけミニ冊子」の役割を、具体的にリアルに想像してみましょう。まず、卸問屋の現場ではどうでしょう。ベテラン社員は当然既にいろいろ知識がありますから、「ミニ冊子」などもはや必要ないかもしれませんが、新入社員の方が入ってきた場合などはどうでしょう。「船中八策」の意味も分からない可能性が高いですから、大いに役立つ可能性大でしょう。「売ってみたい!」という「動機づけ」のきっかけになるかもしれませんし、司牡丹酒造に対して絆を感じるきっかけになるかもしれないのです。次に、酒販店店頭の小売りの現場ではどうでしょうか。ほとんどの酒販店の店主にとっては、長年扱ってきた大定番の商品ですから、「ミニ冊子」などもはや必要を感じないかもしれません。しかし、新規加盟店の場合は、「船中八策」の意味を初めて知って、「売ってみたい!」という「動機づけ」のきっかけになるかもしれません。また、酒販店に来店される顧客でも、まだ「船中八策」をまったく知らない方もいらっしゃるはずですし、新規客にとっては知らない方も少なくないでしょう。そんな方々が店頭で「ミニ冊子」をペラペラとめくって、購入の「動機づけ」となることもあるはずなのです。続いて、料飲店の現場ではどうでしょう。料飲店でこの「ミニ冊子」を読んだことに「動機づけ」られて注文し、美味しかったのでその後「船中八策」のファンになったという方の話を、私は聞いたことがあります。これと同じことが、今後も起こる可能性は間違いなくあるわけです。さらに、「船中八策」の熱烈なファンで、家飲みでよく愛飲されてらっしゃる方が、この「ミニ冊子」を集めておいていろんな機会に配り、「船中八策」のPRをしてくださっているという話も、私は聞いたことがあるのです。こういう有り難い方が、今後も現れてくるかもしれません。……まだまだいろいろ考えられそうですが、ここまででも充分過ぎるほど、「ミニ冊子」は様々な現場において役立っており、今後もまだまだ十分役立つ可能性が高い、極めて優秀な販促品であるといえるのではないでしょうか。特に優秀な点は、商品から離れて一人歩きでき、様々なシーンで勝手にPRしてくれ、購入の「動機づけ」になってくれたり、司牡丹酒造との「絆づくり」にも役立っているという点でしょう。もちろん大半は捨てられる運命でしょうが、たとえ1,000冊に1冊でも、誰かの購入の「動機づけ」や「絆づくり」に役立ってくれているとするならば、それは優秀な販促品であるということなのです。 【「『系』が見える」人間になるために!】 このように「『系』が見える」ということが、いかに重要なことなのかが少しはご理解いただけたのではないでしょうか。「『系』が見えていない」ことの恐ろしさは、極めて優秀な販促品であったり、「動機づけ」のきっかけとなる活動であったり、「絆づくり」につながる活動であったりする重要な存在を、「経費削減」などの名のもとに、気づかずに平気で切り捨ててしまいかねないという点にあります。そうならないためにも、「『系』が見える」目をしっかりと養わなければならないのです。そのためには、次の4点が重要でしょう。まず、①様々な活動について、この活動は「動機づけ」に寄与しているのか、「絆づくり」に寄与しているのかという視点を常に持っておくことです。次に、②因果関係の図で考えるクセをつけておくことです。そして、③日々の活動の中で現場の声、お客様の声を聞くことを決して忘れないことです。その上で、④リアルな想像力を働かせることができれば、きっといつの間にか「『系』が見える」目が養われていることでしょう。 今回は、日本酒メーカーと司牡丹酒造の事例のみをあげさせていただきましたが、この「『系』が見える」目は、あらゆる仕事、あらゆる組織、あらゆる人間関係において、これからの時代ますます必要となってくる能力なのです。あらゆる環境が年々さらに厳しいものになっていく時代、どんな仕事であれ、どんな組織であれ、どんな人間関係であれ、「動機づけ」の能力は、今後ますます重要視されるものになるでしょうし、「絆づくり」の能力も今後ますます必須のものとなっていくことでしょう。「動機づけ」とは、相手の心を動かしその気にさせる能力であり、「絆づくり」とは、他から抜きんでた特別な存在になる能力です。相手の心を動かしてその気にさせることができ、他から抜きんでた特別な存在になることができれば、いかなる仕事であれ、いかなる組織であれ、いかなる人間関係であれ、これからの厳しい時代に、それらを維持・発展させていくことができるのだといえるでしょう。