【門前編】「日本酒?ウィスキーですか?」の衝撃!日本酒復活のために!

First part of the gate

【門前編】「日本酒?ウィスキーですか?」の衝撃!日本酒復活のために! 令和5年10月19日(木)、東京の「ホテルニューオータニ」において、日本政策金融公庫中小企業事業の全国の取引先約1万1,000社から、約1,200名が参加するという「中小企業全国懇話会」の「第17回全国交流大会」が開催され、私も出席させていただきました。総会や講演会も終わり、その後大懇親会が開催されたのですが、その立食パーティの最中に、ホテルの若い女性スタッフの方に「日本酒はありますか?」と訊ねたところ、「日本酒?ウィスキーですか?」という衝撃的な返事が返ってきたのです!その女性は日本人の20代のスタッフの方でしたが、もちろんアルバイトかもしれません。しかし衝撃的なのは、つまりその女性にとっては、「日本酒」という言葉が何を意味するかが分からなったという事実です。数分後にはきちんと日本酒を持ってきてはくれたのですが、私はこの衝撃にしばらく呆然としてしまいました。もはや日本人の若い方々の中には、「日本酒」という言葉の意味すら分からない方もいるということなのです。「酒道黒金流」を学ぶ私たちも、日本酒業界の人たちも、日本酒を愛する方々も、それぞれがそれぞれのやり方で日本酒の復活を夢見ていると思いますが、もしかしたら私たち全員が、根本的に考え方をあらためなければならないのかもしれません。そこで今回は、この「日本酒?ウィスキーですか?」の衝撃からスタートし、真に日本酒が復活するためには何が必要なのか、じっくり考えてみたいと思います。 【「日本酒?ウィスキーですか?」の意味するもの】 まずは、この「日本酒?ウィスキーですか?」という言葉を深く吟味し、その意味するものを考えてみることからスタートしましょう。この女性の返事を忠実に再現すると、「にほん…しゅ?…ウィスキーですか?」となります。つまり、おそらくこの女性は、「日本酒」という言葉を聞いた経験が、これまでなかったのではないかと考えられます。たとえば私たちであっても、「アメリカ酒はありますか?」と聞かれたら戸惑うでしょう。「国の名前+酒」という言葉では、一般的には何の酒を意味しているのかが通じないのです。ですから彼女は「にほん…」という国の名前を言った後、少し間をあけてから「しゅ」という言葉を加えたのではないかと考えられます。そして、「日本という国の名前+酒」で彼女なりに考えて、記憶の中の日本にある酒の会社で知っているのは…サントリー(あるいはニッカ)だ!つまりそれはウィスキーかな?…となったのではないかと、私は考えました。 そしてこの「日本酒?ウィスキーですか?」という言葉が象徴的に表しているのは、先にも述べたとおり、もはや日本人であっても若い方々の中には、「日本酒」という言葉の意味すら分からない方もいるという、衝撃的な事実です。これまで私たちは、「日本酒離れ」「日本酒嫌い」「日本酒はくさい」「日本酒は泥酔する」「日本酒はオヤジの飲み物」……等々の、日本酒に対するマイナスイメージをいかに払拭するかに尽力してきました。その活動は、ある意味で「嫌い」を「好き」に変換しようとするようなものでした。「嫌い」なものを「好き」なものに変換させることは、実は比較的容易です。たとえば、大学時代に安酒の1升瓶で日本酒イッキをさせられて日本酒嫌いになった人に吟醸酒を飲ませれば、「こんなフルーティな日本酒があったんだ!」と気づき、比較的簡単に「嫌い」が「好き」に変換したりするのです。しかし…「日本酒」という言葉の意味すら分からない人というのは、別に日本酒が「嫌い」なわけではありません。ただし、もちろん「好き」でもない。では日本酒に対してどう思っているのかというと…それは何も思っていない…つまり「無関心」なのです! ここで、「無関心」の恐ろしさについて、少し補足しておきましょう。カナダにあるブリティッシュコロンビア大学を中心とする研究チームが、職場での「仲間はずれ」と「無視」に関する調査を実施しました。そこで判明したのは、多くの人たちは「無視」することは、「いじめ」たり「仲間はずれ」にしたりすることよりも有害ではなく、罪は低いと考えていますが、実は「無視」される方が職場への帰属意識や責任感が低下しており、こちらの方が会社を辞めやすいという事実だったのだといいます。つまり、直接いじめられるよりも、無視されることの方がつらいということなのです。また、ナチス・ドイツのホロコーストからの生還者であるエリ・ヴィーゼル氏は、強制収容所での経験を自叙伝に記し、ノーベル平和賞を受賞していますが、彼の言葉に「愛の対義語は憎しみではなく無関心だ」という言葉があります。ナチス・ドイツによって約600万人のユダヤ人が犠牲になったといわれていますが、その虐殺の背景には、多くの民衆の「無関心」があったことを、私たちは決して忘れてはならないのです。 日本酒が「嫌い」ならば、それはまだ「好き」に変換できる可能性があります。しかし、日本酒にまったく「無関心」という場合は…いったいどうすればいいのでしょうか?少なくとも、日本酒に対するマイナスイメージをいかに払拭するかに尽力したところで、「無関心」な人にはまったく響かないでしょう。近年日本酒は、どんどん進化し、年々より美味しくなっています。しかし、日本酒全体は未だに減少傾向に歯止めがかからず、年々市場は縮小の一途をたどっています。もちろんコロナ禍の影響も大きいですが、それを鑑みてもこの減少度合いは異常なほどです。もしかしたらその根本原因は、日本酒が「嫌い」な人よりも、日本酒に「無関心」な人がどんどん増加していることにあるのかもしれません。だとしたら、私たちは皆、根本的に考え方をあらためなければならないのではないでしょうか。 【無関心な人をいかに動機づけるか?<1>「モノ」から「ヒト」へ!】 まず私たちが根本的にあらためなければならない考え方の第一に挙げられるのは、私たちはこれまで、あまりにも日本酒という「モノ」にフォーカスしすぎだったという点でしょう。誤解しないでいただきたいのですが、日本酒メーカーが日本酒という「モノ」にこだわってより優れた日本酒を世に出そうとすることも、酒類卸や酒販店や飲食店らがそんな日本酒という「モノ」へのこだわりや特徴を世に広めようとすることも、それは当然のことであり、これらを否定するつもりは毛頭ありません。しかし、よくよく深く考えてみていただきたいのです。たとえどれほど大きな売り上げであっても、実は1人ひとりの人間の「行動」がその売り上げを作っているという事実に気づかなければならないのです。1人の人間がある商品に興味を持って、手に取り、レジに持って行き、お金を払うという行動が成立して初めて、売り上げがたちます。そして、そんな1人ひとりの行動が集まって、大きな売り上げをつくっています。つまり、ヒトの行動だけが売り上げをつくるのです! これまでの時代ならば、「モノ」にフォーカスした伝え方でもまだ売り上げがつくれたかもしれません。しかしこれからの時代、今後ますます日本酒という「モノ」自体に無関心な人が増えていくのだとしたら、もはや「モノ」にフォーカスした伝え方では、そのこだわりはまったく届かないことになってしまうのでないでしょうか。これからの時代は、「モノ」へのこだわりをそのまま伝えるのではなく、それらを「ヒト」にフォーカスした言葉に変換して伝えなければならないということが、もはや死活的に重要なのだといえるでしょう。 【無関心な人をいかに動機づけるか?<2>「売る」から「買いたい」へ!】 では、「モノ」へのこだわりをそのまま伝えるのではなく、それらを「ヒト」にフォーカスした言葉に変換して伝えるには、いったいどういう発想の転換が必要なのでしょうか。まず、「モノ」にフォーカスした状態では、どうしても自分自身が感じる「モノ」の価値を伝えることで、「モノ」を「売ろう」としてしまいます。しかし、商売やビジネスをその本質から捉え直すならば、「ヒト」にフォーカスすべきであり、「自分自身が感じる価値」ではなく、「お客様が感じる価値」という視点に切り替えなければなりません。さらに、お客様に「売る」ではなく、お客様に「買いたい」と思ってもらうことであると理解しなければなりません。「そこにある商品が売れる」という捉え方ではなく、「その商品を買いたいと思った人がそれを買う」という出来事であると捉えるのです。つまり、伝えるべき「モノ」の価値を、自分視点ではなくお客様視点で捉え直して伝え、お客様に「売ろう」とするのではなく、お客様に「買いたい」という気持ちが起こるように働きかけるということです。これは、言葉で聞くと簡単に聞こえるかもしれませんが、長年商売を続けてきた人ほど、これまでの商売の習慣が沁み込んでいるため、意外に困難を極めます。しかし、この発想の転換ができなければ、「ヒト」にフォーカスしたことになりませんから、ここはしっかりと脳裡に焼き付けていただきたいと思います。 具体例を1点挙げておきましょう。「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰する小阪裕司先生(「オラクルひと・しくみ研究所」代表、情報学博士)の、メールマガジンのコラムに紹介されていた、ある地方の小さな町にある食品スーパーの事例です。同店では、長年にわたりワインを販売していましたが、ほとんど売れず、3ヶ月の販売実績もわずか5本だったのだそう。商圏が、高齢者の多い過疎の町であることもあり、店主は、この地域の人はワインを飲む習慣がないんだなと考えていたのだといいます。また店主自身も、ワインが飲めないわけではないがよく分からない、分からないから飲まないということで、店での販売にも力が入らなかったのだそうです。そんなある日、友人たちとの飲み会があり、そこでたまたま飲んだワインが実に飲みやすく、友人らとも、「ワインはよく分からんが、これは飲みやすい!」と、何本も空けたのだとか。そこで店主は気づいたのだといいます。今までワインを飲もうと思わなかったのは、ワイン初心者である自分に合ったワインに出会わなかったことと、それでも特段困りはしなかったからだが、それはお客様も同じではないか。ワイン初心者である自分は詳しい方のようには語れないが、「初心者はこれを飲んでみて!」「初心者の自分がはまっている」というメッセージなら発信できる、と。そこで早速このワインを仕入れ、チラシとPOPで「ワイン初心者が飲むべきワインはこれ!」という内容の情報を発信したところ、大人気となったのだそう。これまで3ヶ月で5本しか売れなかった同店で、たった1銘柄で、1ヶ月に30本以上が売れたのだとか。その後も、「飲みやすくて気に入った」「友達にも教えてあげたいのでプレゼントに」とリピーターが増え、すっかり売れ筋商品となったのだといいます。そして、それから10年ほどが経った今、同店のワイン売り場は大きなスペースになり、1万円以上する高級ワインも普通に置かれるようになったのだそう。それは客層が変わったのではなく、この10年前の実践をきっかけに、地域にワインファンが増えたことによります。「価値を伝える」とは、単にその商品が売れるだけでなく、その商品を持続的に購入する「顧客を創る」ことにもなるということなのです。今回の例のように、それが長年ずっと売れなかったものでも、です。要は日本酒も、この例のようにお客様視点で捉え直し、お客様に「買いたい」と思ってもらうように仕掛けることで初めて、日本酒に無関心な人であっても関心を持ってもらえる可能性が開けていき、たとえ高齢者だらけの過疎の町であったとしても、高額な大吟醸酒でも普通に売れるようになる、つまり「顧客を創る」ことができるということなのです。 【日本酒を売ろうとするから日本酒が売れないのだ!】 さらにここで、誤解を恐れずにハッキリと言ってしまいましょう。「日本酒を売ろうとするから日本酒が売れないのだ!」と。いまや日本中、世界中に様々な日本酒コンテスト等が乱立し、「〇〇賞受賞!」とか「〇〇コンテストで第1位!」とかのキャッチコピーが蔓延しています。もちろん司牡丹酒造も、そりゃあ賞は獲りたいですし、獲れたら嬉しいですし、そのために品質のブラッシュアップは常に欠かすことなく継続しています。そしてこれらのコンテストのお陰で、日本酒全体の品質が相当アップしたというのも事実でしょう。しかし…この「〇〇賞受賞!」も、やはり日本酒という「モノ」にフォーカスした戦略であることに変わりはないのです。しかも、この賞獲り合戦のお陰で、全国の日本酒がますます地域の風土や食文化から乖離し、「地域性」からかけ離れていっているように私には見えるのです。 日本酒の最大の特徴であり魅力は、この「地域性」にあると私は思っています。日本全国それぞれの地域に多様で固有の風土があり、歴史があり、食文化があり、その風土や歴史や食文化と密接につながった多様で固有の日本酒がそれぞれの地域に存在しているからこそ、日本酒は面白いし楽しいし、魅力的なのだと思っています。しかし…近年は、賞を獲らんがために、日本酒の方からこの「地域性」を捨て去ろうとしているかのように見えます。日本酒が、最大の特徴であり魅力である「地域性」を捨て去ったその先に、いったいどんな世界が待っているのでしょう?…日本酒業界がいつまで経っても復活できない最大の原因は、もしかしたらここにあるのではないでしょうか。 確かに、日本全国それぞれの地域にある多様で固有の風土や歴史や食文化など、いまや消え去りつつあり、風前の灯となっているのも事実でしょう。ただし…近年、そんな消え去りかけている地域の多様で固有の風土や歴史や食文化を守ろうという動きが、若い方々の間で活発化し始めているのも事実なのです。つまり、日本酒というモノには「無関心」な若者であっても、地域の多様性や地域の風土や地域の歴史や地域の食文化や、町おこしや地域文化復興などには関心があるという人が、少なからず存在しているということなのです!ならば今こそ!日本酒蔵元が地域の酒類卸や地域の酒販店らと共に立ち上がり、そんな若者たちと手を携えて、それぞれの地域にある多様で固有の風土や歴史や食文化を守り育てていく活動を、起こしていくべき時なのではないでしょうか。 これはつまり、日本酒という「モノ」にフォーカスして「日本酒を売る」のではなく、「地域性」を守りたいという「ヒト」にフォーカスして、「地域の風土や歴史や食文化・酒文化を売る」ということに他なりません。これこそが、「もはや死活的に重要」だと先に書いた、「モノ」へのこだわりをそのまま伝えるのではなく、「ヒト」にフォーカスした言葉に変換して伝えるという行為に当たるのです。さらに、そんな活動こそが、お客様に「売ろう」とするのではなく、お客様に「買いたい」という気持ちが起こるように働きかけるということにつながっていくのです。そんな活動が日本全国各地で活発化していくならば、日本酒に「無関心」であった若者たちの中からも、日本酒を「買いたい」という気持ちになる人たちが現れてくることでしょう。そしてこの活動の先に出現する未来こそ、日本酒復活の未来であると私は確信しています。 【「地域の風土や歴史や食文化・酒文化を売る」ことの大きな可能性】 そして、この「地域の風土や歴史や食文化・酒文化を売る」という活動は、インバウンドにおいても大きな可能性を秘めているのです。「シン・JAPAN~外国人が次に絶対訪れたいニッポンの新地図帳~」(AmazingJapanResearchers 著宝島社 2023年8月3日発行 1,500円+税)というムック本にて、テクノロジーを開発・駆使するメディアアーティストであり実業家でもある落合陽一氏が、「インバウンドの成長は歴史のマネタイズで狙え」(※マネタイズ=収益化)というタイトルで、特別インタビューに答えています。まず、「アフターコロナにおける観光の意義」としては、次のように語られています。「あらゆる分野でデジタル化が進み、日々の暮らしのなかでも、あらゆる体験がフィジカルなものとデジタルなものに分けられるようになりました。そのような状況のなかで、人々が観光する際には、物理的に移動することによって体験できる食や、画面越しでは体験できないようなインスタレーションや文化財、地方におけるローカルな体験に価値が置かれるようになっていると思います。」(※インスタレーション=場所や空間全体を作品として体験させる芸術) また落合氏は、「マネタイズするうえでのキャッシュポイントは?」との質問に、次のように答えられているのです。「2020年に日経BPコンサルティング・周年事業ラボが集計した『創業200年企業の国別ランキング』によると、創業から200年以上を経過した企業が最も多いのは、1340社の日本でした。世界の創業200年以上の企業の総数は2129社でしたから、そのうちの6割以上を日本が占めていることになります。たとえば、創業200年を超える老舗旅館は、その歴史的価値はかなり高くなるので、それだけでマネタイズできるわけです。我々日本人は『歴史』に対して価格をつけるということをしてきませんでした。世界的に見ると『歴史』はそれだけで高い価値がつけられるものなのですが、日本人はそこを見過ごしてきた。また、長生き企業には、食品や飲料を扱っているところもあるでしょう。つまり、200年以上もの歴史のある飲料や食品が数多く存在しているのです。しかし、その歴史的な価値に気がついていない人が多いので、ブランド化されず、利益に結びつかない。フランスのシャンパーニュ地方特産のシャンパンのように日本酒もブランド化できたら、海外から人を集めるだけでなく、輸出量の増加にもつながりますよね。」…さらに、「今後の日本旅行のトレンドは?」という質問には、次のように答えられています。「ビフォーコロナでは、旅行をする動機が『のんびり過ごしたいからリゾート地に行きたい』『スキーをするために雪の降る地域に行きたい』など、『居住地とは異なる経験ができる場所に身を置きたい』という欲望に基づいていたと思います。それと比較すると、現在は地理的な移動にとどまらない“より深いもの”──文化的な体験を求めて旅をする人が増えたのではないでしょうか。」と。 さらに、インターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」開設者で、英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人でもあり、YouTubeチャンネルの登録者数158万人を誇る実業家、ひろゆき氏も、同書の特別インタビューにて、「『日本でしかできない体験』は季節×地域×食材でどこでもつくれる」というタイトルにて、より具体的に語られています。「富裕層には『高くていいものを出せば出すほど喜ばれる』という傾向もあるんです。『自分も他人もやったことのない経験』には、お金をかける価値があると考えているのでしょう。能登半島でつくられている、成熟したナマコの卵巣を干した『干しくちこ』という高級珍味がありますが、そういう『手間暇かけてつくられたとても高額なもの』というのは、どんな味がするかわからなくても『おもしろい!』と思って購入してしまう。たとえ干しくちこが10万円するとしても『日本でしか食べられない希少な食材』という点だけで、外国人は惹かれるはずです。(中略)戦略を立てて訪日観光客数と観光収入を増やしたいのであれば、『独自性』が大切になるわけです。また、日本は『何度も行きたい』と思わせるポテンシャルのある国だと思っています。ツアーで巡るような観光地は一度訪れたら『こんなもんだよね』と、見飽きてしまうことのほうが多いと思うのですが、『ごはんがおいしかった』経験は、その国をリピートして訪れたくなる大きな理由になるのではないでしょうか。石川県の『香箱ガニ』のように、限られた土地で限られた季節にしか食べられない海産物をもっと推すべきです。『シーズンでしか食べられない』『その場所に行かないと食べられない』という食材は、『旬の時季にその場所に行ったから食べられた』という、独自性が高く貴重な経験を提供する機会になるので、日本に何度も足を運びたくなる理由になるでしょう。」 そしてひろゆき氏は、日本酒についても具体的に語られています。「地域限定という点では、日本酒をもっと推すべきです。日本酒を輸出するときには冷蔵コンテナに入れるのですが、ワイン専用のコンテナはあっても、日本酒専用のコンテナはないですよね。おいしい日本酒をつくっている小さな酒蔵が自分たちでコンテナを用意して、海外にその味を届けるのは難しい状況にあるわけです。だったら、輸出を強化するのではなく、『日本でしか飲めない酒』としてアピールする。酒蔵は全国各地にありますから、地方にも訪日観光客が足を運び、お金を落とす機会になります。」と。 かの落合陽一氏も、ひろゆき氏も、語られているのはまさに、「地域の風土や歴史や食文化・酒文化を売る」という活動こそ、全国各地のインバウンド成長のカギになるという内容であるともいえるでしょう。最後に、ここまでの内容をまとめてみましょう。つまり、日本酒という「モノ」にフォーカスして「日本酒を売る」のではなく、「地域性」を守りたいという「ヒト」にフォーカスして、「地域の風土や歴史や食文化・酒文化を売る」という視点に切り替え、さらに、お客様に「売ろう」とするのではなく、お客様に「買いたい」という気持ちが起こるように働きかけるという活動が日本全国各地で活発化していくならば、日本酒に「無関心」であった若者たちの中からも、日本酒を「買いたい」という気持ちになる人たちが現れてくる可能性があるのみならず、それはインバウンド成長をも促す活動になるということなのです。やはり、このような活動の先に出現する未来こそが、日本酒復活の未来であると確信を持っていえるのではないでしょうか。