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- 【門前編】「科学者たちが語る食欲」に学ぶ!<後編>
First part of the gate
著者は、肥満とその関連疾患の蔓延に関して、最も責任が重い食品分類は、「超加工食品」――高度に加工された材料と人工的な成分でつくられる工業製品――なのだといいます。超加工食品は、一般にタンパク質、食物繊維、微量栄養素が少なく、脂肪と不健康な炭水化物が多く、風味を高める物質が添加されているのだそうです。これらはまさに著者らの動物研究から明らかになった、過食と不健康を招く条件なのだといいます。公衆衛生栄養学の第一人者、サンパウロ大学のカルロス・モンテイロ教授の研究によると、「超加工食品」と呼ばれる分類の食品の摂取量が増えると肥満が増えるのだといい、そして肥満が増えるほど、糖尿病や心疾患、脳卒中、特定の種類のガン、早死が増えるのは周知のとおりなのだというのです。では、超加工食品とはいったい何なのか?カルロス教授は、食品を加工のレベルに応じて分類し、健康を脅かす加工食品を特定するためのシステムを開発したのだといいます。この方式は、「NOVAシステム」と呼ばれ、食品を加工の性質によって次の4つに分類しているのだそうです。
<グループ1>食品の長期保存、簡易調理のための加工:非加工食品と、組成をほとんど変化させない単純な方法――乾燥、粉砕、焙煎、煮沸、低温殺菌、非食用部分の除去、真空パックなど――で加工された食品。低温殺菌牛乳、粉乳、冷凍・缶詰野菜、無塩のローストナッツ、乾燥豆など。
<グループ2>下ごしらえ、風味づけのための加工:「グループ1」のようなホールフード(丸ごとの食品)を含まず、食品の下ごしらえや調理、風味づけに使われる食材。バターやオイルなどの油脂類、メープルシロップなどの砂糖および関連製品、塩などがこれに含まれる。これらの食材は、主に精製、抽出、圧搾、また塩の場合は採取、蒸発などの機械的加工によって製造される。
<グループ3>缶詰、瓶詰:加工食品だが「超」のレベルには該当しないもの。これらは瓶詰や缶詰、場合によっては発酵などの保存技術を用いて、「グループ1」の非加工・最小加工食品に、「グループ2」の食材(脂肪、糖、塩)を加えて製造される。「グループ3」の加工の主な目的は、「グループ1」の食品の品質保持期間を延ばし、嗜好性(美味しさ)を高めることにある。このグループの食品の例には、缶詰・瓶詰の豆や野菜、果物、缶詰の魚、塩または砂糖で味つけされたナッツ、塩漬け肉・乾燥肉・燻製肉、伝統的な製法でつくられたチーズやパンなどがある。
<グループ4>ペンキやシャンプーと同じ「工業製品」である「超加工食品」:消費者の装飾的な美学や衛生観念にではなく、味覚に訴えるよう設計されている。一般に超加工食品の製造は、大規模な機械によってホールフードをデンプン、糖、脂肪、油、タンパク質、食物繊維などの成分に分解するところから始まる。原材料となるのは、主に工業生産された高収量作物(トウモロコシ、大豆、小麦、サトウキビ、テンサイなど)や、集約的に生産された畜肉の挽肉やすり身である。続いて加水分解や水素化などの化学的修飾を施されてから、ほかの物質と組み合わされることもある。またその過程で、さらに工業加工(前揚げ、押し出し、成形など)されたり、また品質保持期間を延ばし、食感や風味、匂い、外観を変えるために、化学添加物を配合されることもある。こうした添加物の多くが農産物由来ではなく、石油などの産業に由来する化学物質である。
著者の住むオーストラリアでは、2018年に販売されていた加工食品の61%が、超加工食品だったのだといいます。そして、これらが有害かどうかは重要な問題だが、それは線引きがとても難しい問題でもあり、おそらく有害なものもあれば、確実に有害なものもあるのだと著者は語るのです。たとえば2018年10月にアメリカ食品医薬品局(FDA)は、動物実験で発がん性の証拠が得られたとして、超加工食品に合成香料として使われていた8種類の添加物の使用を禁じたのだといいます。それらは、ベンゾフェノン、アクリル酸エチル、オイゲニルメチルエーテル、ミルセン、プレゴン、ピリジン、スチレンなのだと。ベンゾフェノンについては、食品と直接接触するゴムの製造に使用することさえ禁じられたのだそうです。しかし、FDAの決定後2年間は使用が認められているため、しばらくは大手を振って食品に使われることになったのだといいます。だがどの食品に使われているかを知るすべはないのだと。なぜなら、食品メーカーには、ラベルに「合成香料」以上の詳細を表示する義務はないのだというのです。 さらに悪名高い例が「トランス脂肪」なのだといいます。トランス脂肪とは、植物から抽出された健康的な不飽和油を、水素化(水素原子を付加)することで、工業的に製造される脂肪なのだそうです。なぜこんなことをするのかというと、安価な液体油を固体化させることができ、それをバターの代わりにピザやパイ、電子レンジポップコーン、ドーナツなどの製品に使うと、パリパリ、サクサクとした食感が得られ、さらに品質保持期間も延ばすことができるからだといいます。しかし残念ながら、これを使った超加工食品を食べる人々の寿命を延ばすことはないのだというのです。工業的に製造されたトランス脂肪が、現在あるすべての脂肪の中で最も危険だという点で、健康管理の専門家の意見は一致しているのだといいます。世界保健機関(WHO)の推計によれば、トランス脂肪の摂取が原因で、毎年世界で50万人以上が心臓病で亡くなっているのだというのです。2005年のデンマークをはじめ、アイスランド、オーストリア、スイスなど一部の高所得国でトランス脂肪が禁止されているにも関わらず、これだけ多い人数なのだと。アメリカは、2018年になってようやくその使用を禁止したのだそうで、その後の研究により、心臓病による入院と死亡が大幅に減少したことが示されているのだといいます。そして著者は、トランス脂肪は今も多くの低中所得国と一部の高所得国(日本も含まれる!)の食品の重要な一角を占めており、著者らが暮らすオーストラリアでは禁止されていないし、加工食品のメーカーには、表示する義務さえないのだというのです。(日本も表示義務なし!) そして著者は、より目立たないがさらに恐ろしい側面があるのだといいます。それは、超加工食品のメーカーが、私たちにその食品を大量に食べさせるという結果を確実に引き起こすような設計を、意図的に組み込んでいるのではないかという点だというのです。ひとつの可能性として、食品メーカーは意識的にだろうとなかろうと、低タンパク質食に向かって舵を切りつつあり、私たちはそれに反応して食べる量を増やしているとも考えられるのだといいます。超加工食品では、その製造過程において、食物繊維が取り除かれ、微量栄養素も捨てられるのだそうです。そして、繊維が少なく脂肪と炭水化物が多い食品は美味しく感じられるため、消費者は選びがちになるのだそうで、おまけにタンパク質をあまり含まないので製造原価も安くなり、そして、低タンパク質・低繊維・低価格の三拍子揃った食品は、ついつい食べすぎてしまうのだといいます。かくして超加工食品が全面勝利を収めるというわけだと著者は語るのです。 さらに、これだけならまだしも、最後のとどめがあるのだといいます。炭水化物を増やすことによって、タンパク質と繊維、微量栄養素を希釈してきたのは、工業加工だけではないのだというのです。炭水化物の含有量が増加しているのは、農業開始以来、1万年にわたって作物の栽培品種化がもたらし続けている影響のひとつでもあるのだといいます。さらに最近明らかになった憂慮すべき問題は、産業活動の活発化による大気中の二酸化炭素濃度上昇が、栽培品種化と超加工食品とまったく同じ作用をおよぼし、主要な食用作物中の炭水化物を増やし、タンパク質と繊維、微量栄養素を減らしているのだと、著者は語るのです。 【金銭欲・肥満】 巨大多国籍食品企業は、収益性の高い超加工食品を大量に販売し、消費を促すための巧妙な戦略を、一般大衆の健康に与える影響などおかまいなしで考案してきたのだと、著者は語ります。たとえば、子どもなどに対する積極的なマーケティング、健康効果をほのめかしたり、健康リスクを隠蔽したりする紛らわしい表示などが、その戦略なのだと。さらに著者は、食品産業はタバコ産業が生み出した戦略を採用し、製品の危険性に関する科学的証拠を歪曲し、政府の政策や、食事ガイドラインなどの公衆衛生上の助言などに影響力を行使してきたのだというのです。 タンパク質とエネルギーの必要量は、ライフスタイルによって、また誕生から老齢まで生涯を通して変化し続けるのだといいます。タンパク質ターゲットは、出生より前に、親のライフスタイルによって決定されることさえあるのだというのです。タンパク質ターゲットが高いほど、それを達成するために多くの食べ物を食べなくてはならず、食物繊維が少なくエネルギーが高い食事の場合、タンパク質ターゲットを達成するために余分なカロリーを摂取しなくてはならないのだといいます。この結果、体重増加とインスリン抵抗性(糖尿病前症)のリスクが高まるのだというのです。インスリン抵抗性は体内のタンパク質が減少する速度を高めるため、タンパク質ターゲットはさらに上昇し、過食と持続的な体重増加、2型糖尿病や心臓病、そのほかの健康問題を助長する悪循環が生じるのだと、著者は語っています。 【教訓~「正しい知識」で食べる~】 ほとんどの動物が持つ強力なタンパク質欲が、脂肪や炭水化物などの他の栄養素の過剰または過少摂食を引き起こし得る、という発見こそ、本書の重要な洞察であり、著者らの研究の指針であったのだといいます。タンパク質欲が満たされなければ、動物はそのまま食べ続け、いったん十分なタンパク質が得られれば、摂食を促していた食欲は止まる。……これが栄養をできる限り単純にした――だが必要以上に単純化していない――説明なのだというのです。そして著者は、本書の重要なポイントを、以下のようにまとめて紹介しています。 <本書の重要なポイント>➀タンパク質に対する特別な渇望は、普遍的な欲求だ。タンパク質欲は、あらゆる動物が栄養素の摂取ターゲットに到達するのを支援するために進化した。動物はタンパク質が必要になると、その風味への渇望を感じる。ヒトはタンパク質が不足すると、あの食欲をそそる旨みにたまらなく引き付けられる。
➁タンパク質欲は、他の食欲――主に炭水化物、脂質、ナトリウム、カルシウムに対する食欲――と協力して、健康的でバランスの取れた食餌を摂るよう動物を誘導する。
③この誘導システムは、自然の食環境の中で進化した。この環境では、食べ物に含まれる全ての栄養素の間に、確かな相関関係が存在した――これらたった5つの栄養素の摂取を調整するだけで、おのずとその他の数十の有益な物質を含む、バランスの取れた食餌を摂ることができた。
④だが自然にあっても、特定の食べ物が不足してバランスの取れた食餌が摂れなくなることがある。そういう状況になると、食欲は協力するのをやめて、競争する。
⑤ヒトをはじめとする様々な種では、競争に勝つのはタンパク質だ。その結果、タンパク質欲が、全体的な摂食パターンを決めるようになる。
⑥食環境にタンパク質が不足していれば、私たちはタンパク質欲が満たされるまで食べ続ける。他方食事のタンパク質比率が、体が必要とするよりも高ければ、タンパク質欲は早めに――総摂取カロリーが少ないうちに――満たされる。
⑦だからといって、タンパク質が多ければ多いほどよいというわけでは全くない。イースト細胞からハエ、マウス、サルまでの生物は、タンパク質を過剰摂取しないよう進化した。それにはいくつか理由があるが、主な理由は、タンパク質を摂りすぎると、老化を早め寿命を縮める生物学的プロセスが作動するからである。
⑧私たちは、食システムの工業化によって、栄養バランスを図る能力を著しく阻害されている。
そして著者は、自分の食環境を自分で管理し、食欲を活用するためのヒントを紹介し、本書の旅を終えようと語るのです。といっても、これはどういう生活を送るべきかという処方箋ではなく、これまでの研究を踏まえ、科学的証拠を著者たちなりに解釈したものだといいます。健康的で楽しい食生活へと向かう旅のロードマップと考えてほしいと語るのです。<自分の食環境を自分で管理し食欲を活用するためのヒント> ➀自分の「タンパク質ターゲット」を理解する
あなたのタンパク質の摂取ターゲットを、次の3ステップで推定しよう。
<ステップ1>あなたの年齢、性別、活動量をもとに、1日のエネルギー(カロリー)の必要量を推定する。「ハリス・ベネディクト法」と呼ばれる式を使って計算してくれるサイトを利用しよう。
<ステップ2>このカロリーのうち、どれだけをタンパク質から摂る必要があるか(つまりあなたのタンパク質摂取ターゲット)を推定しよう。ステップ1で出した値に、次の係数をかけて算出する。●子ども、青少年:0.15(タンパク質比率15%の食事を意味する)●若年成人(18歳~30歳):0.18●妊婦、授乳婦:0.20●成熟した成人(30代):0.17●中年(40歳~65歳):0.15●老年(65歳超):0.20
<ステップ3>ステップ2で算出した値を4で割って、1日に摂取すべきタンパク質のグラム数を算出しよう。(タンパク質1gは4kcalに相当する。)
➁「超加工食品」を避ける 超加工食品を避けよう。目の前にあると食べてしまうから、家の中に持ち込まないのがいちばんだ。そういう食品はついつい食べてしまうようにできている。 ③「高タンパク質食品」を食べる 多種多様な動物性食品(鶏肉、肉、魚、卵、乳製品)および/または植物性食品(種、ナッツ、豆)の中から高タンパク質食品を選び、タンパク質の摂取ターゲットを満たすとともに、タンパク質欲を最もよく満足させるバランスでアミノ酸が含まれた食事を摂ろう。 ④「繊維」を食べる 多量の葉物野菜、非デンプン質の野菜、果物、種、全粒穀物を食事に含め、体にカロリー負荷をかけずに繊維を確保して、食欲ブレーキを再起動させよう。豆や種、乾燥豆(ライ豆、インゲン豆、ひよこ豆、ササゲ、レンズ豆など)を食べることでも、繊維とタンパク質、健康的な炭水化物を増やすことができる。ビタミンとミネラルが摂れ、サプリメントの必要性が薄れるというおまけつきだ。 ⑤「カロリー信奉」をやめる カロリー計算にこだわらないこと――きちんとした食事を摂れば、タンパク質欲があなたの代わりにカロリーの面倒を見てくれる。高タンパク質の食品には、良質な炭水化物と脂肪を含む多量の野菜や果物、豆、全粒穀物をつけ合わせよう。そうすれば三大栄養素の食欲を全て満たすことができる。 ⑥食べ物を「混ぜ物」にしない 食べ物に加える砂糖や塩は控えめにし、脂肪分を加えるときは「エキストラバージンオイル」などの健康的なものを選ぼう。 ⑦「空腹」のときに食べる ➀から⑥までの全てを行っても、単にタンパク質の摂取ターゲットと総エネルギー必要量の推定値を満たしただけにすぎない。これを出発点にして、自分の食欲を自分でコントロールしていると感じられるようになるまで――食事どきに空腹を感じ、食後と食間は満足できるようになるまで――量を増減して調整しよう。 ⑧「塩味」が欲しいことの意味を知る 食欲に耳を傾けよう。自分の胸に尋ねよう――「今欲しいのは、塩味や旨みなのだろうか?」。もしそうなら、タンパク質が必要なことを、体が知らせているのだ。そんなときは、ニセのタンパク質(超加工食品のしょっぱい系のスナックなど)の誘惑に特に屈しやすくなっている。誘惑に負けてはいけない――代わりに良質のタンパク質食品を食べよう。 ⑨「食欲」を信じる その一方で、必要と感じる以上のタンパク質を摂らないようにしよう。タンパク質欲が適量を教えてくれるし、摂りすぎにはデメリットがある。食欲は計算サイトよりも正確な測定器なのだ。 ⑩運動時は「20~30g」タンパク質を摂る 運動して筋肉量を増やしているときは、1回の食事につき20g~30gのまとまったタンパク質を摂ると、新しい筋肉タンパク質を形成するための細胞機構が最もよく活性化されることが分かっている。この量が、筋肉合成を起動させるのに最適な量だ。 ⑪「食べない時間」を1日の中につくる 細胞とDNAの修復・維持を促すために、夜間は断食し、間食を控えよう。たとえば午後8時から翌朝の朝食までは何も食べないようにするなど。毎日の断食によって長寿経路が活性化されるうえ、夜遅くに余分なカロリーを摂取するリスクが減り、眠りにつきやすくなる。たとえ全体的な摂取カロリーを減らさなくても、1日のうちの食べる時間帯を制限する(「間欠的断食」や「時間制限摂食」など)だけでも健康効果があることが、研究によって示されている。 ⑫「体内時計」に合わせて眠る よく眠ろう。睡眠は、食事・運動とともに、心身の健康の3本柱の1本である。睡眠と栄養は、体内時計を通じて結びついている。私たちの生物学的機構は、脳にある「親時計」によってコントロールされている。だが親時計はデジタル腕時計のように正確には動かない。少しずつ遅れていくため、信頼できる環境刺激によって毎日リセットする必要がある。時刻設定の主な手がかりになるのは日光だが、食事のタイミングも重要だ。体内時計が睡眠を予期する時間帯に明るい光にさらされたり、ものを食べたりすると、体内時計システムは攪乱され、それが続けばいつか健康を害してしまう。 ⑬こもらず「外」に出る 活動的になろう――できれば戸外に出よう――そして社交的になろう。身体活動と社会交流は、健康増進と長寿と明らかな相関関係にある。 ⑭つくってみる 大好きな料理を自分でつくれるようにしよう――そしてつくり方を子どもに教えよう。それは親が子どもに与えられる最高の贈り物の1つである。 ⑮「流行り」に惑わされない 好きなものを食べよう(超加工食品をできるだけ減らしながら)。栄養バランスのよい食事を摂る方法は無限にある。特別な医療上の理由がない限り、どの食品群(穀物、乳製品など)も除外する必要はないし、また苦手なものや自分の食文化に適さないものを食べる必要もない。世界の伝統的な食文化や新しい食文化は、地域や歴史、宗教と深く結びつき、人々の生活を揺りかごから墓場まで、病めるときも健やかなるときも支えてきた。いま流行りの、ヴィーガンなどの様々な栄養哲学は、特定の状況では健康的な食事になるが、ほとんどの人は続けることができないし、また経済的な既得権益や怒り、狂信が深く絡んでいる。