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- 日本酒の甘口辛口の違いは?見分け方を知って好みの味わいを見つけよう
Know this about sake!
日本酒の味わいを表現する言葉に「甘口」「辛口」があります。味の特徴を伝える言葉として、多くの人がイメージしやすく、伝わりやすい表現ではありますが、具体的な味まではわかりにくいですよね。
この記事では、日本酒の甘口辛口の味わいの違いや、どちらの日本酒が美味しいのか、ラベルから見分ける方法などをわかりやすく解説しています。また、甘口辛口に影響する成分や近年のトレンドについても紹介していきますので、自分好みの味わいを見つける参考にしてください。
日本酒は、銘柄ごとに個性的で風味豊かな味わいを楽しめるのが魅力です。その味わいを飲む人がイメージしやすいように「甘口」「辛口」という表現が使われます。まずは、「甘口」と「辛口」の味わいの違いや特徴をみてみましょう。
甘口辛口と聞くと、料理を食べたときに感じる「甘い」「辛い」が思い浮かびますが、日本酒の場合は言葉からイメージする味とは違います。甘口といってもジュースのような甘さがあるわけではなく、辛口といっても唐辛子やワサビといった辛さがあるわけではありません。
甘口の日本酒は、お酒に含まれる糖分が多く、甘みを感じるお酒のことです。反対に辛口の日本酒は、糖分が少なくキレがよいお酒になります。「辛い」というよりは「甘みが少ない」という表現の方が正しいでしょう。
また、吟醸酒などのフルーティな香りを「甘い」と感じる場合も少なくありません。実際には、フルーティな甘い香りのお酒でも、「辛口」もあれば「甘口」もあります。
そのため、辛口と表記されたお酒を飲んでも、人の味覚によっては「甘みを感じるので辛口じゃない」と感じることがあるかもしれません。ただ、日本酒の個性は酒蔵や銘柄ごとに千差万別です。甘口辛口の表記をひとつの指標として、自分の味覚に合った「甘口」「辛口」を探しだすことが、日本酒の楽しみでもあります。
甘口辛口について、もう少し詳しく見ていくと、味わいの濃淡ごとに「淡麗甘口」「淡麗辛口」「濃醇甘口」「濃醇辛口」の4つによく分類されます。
日本酒の基本的な味わいは、「甘口」であれば甘みとコクがあり、「辛口」であれば甘みが少なくスッキリとしているのが特徴です。さらに、口当たりがさっぱりとして癖がないお酒を「淡麗」、口当たりが濃厚で深みがあるお酒を「濃醇」と呼びます。
淡麗甘口・・・甘みが感じられ後味がしつこくない味わい
淡麗辛口・・・口当たりがスッキリとしていて癖の少ない味わい
濃醇甘口・・・濃厚でコクがあり甘みが際立った味わい
濃醇辛口・・・しっかりとした旨味のある深い味わい
これら日本酒の「甘口辛口」「淡麗濃淳」は、主に日本酒の比重を表す「日本酒度」と、有機酸の量を示す「酸度」から判断されてきました。しかし最近では、日本酒の進化とともに、日本酒度と酸度だけでは区分が難しくなっており、あらたな甘辛基準が提案されるなど、日本酒選びの楽しみ方はさらに広がりをみせています。
日本酒の多くは、お酒に含まれる糖分、酸などの総合的なバランスから「甘口辛口」「淡麗濃醇」を分類しています。これらの成分は「日本酒度」「酸度」で表され、ラベルにも記載している場合がありますので、日本酒選びのヒントとして知っておきましょう。
しかし、数値では辛口に分類されていても実際には甘く感じたり、「日本酒度」「酸度」という従来の測り方では最近の日本酒の多様化に対応できなかったりもしているので、あくまでも「日本酒を比較する目安」として覚えておくとよいでしょう。
表.日本酒度と酸度でみる感応表(甘辛補正表)
日本酒度とは、お酒の比重を表し、結果としてどのくらいエキス分が含まれているのかを数値で表したもので、マイナスの数値になるほど甘いとされています。
水よりも重いというエキス分の性質を利用しており、お酒が水よりも軽いか重いかを測定することで、エキス分の量を導き出す仕組みです。水の数値を0(±0)とし、エキス分が少なく水よりも軽ければ数値がプラス(+)に、エキス分が多く水よりも重ければマイナス(-)となります。
しかし、エキス内のブドウ糖やオリゴ糖など、糖の種類によって甘さの感じ方に違いがあるため、日本酒度だけでの甘さの判断は十分ではありません。また、お酒に含まれるアルコールは水よりも軽く、アルコール度数が高いほど数値がプラス(+)になるため、比較する際はアルコール度数にも気を付ける必要があります。
酸度とは、お酒にどのくらい有機酸が含まれているのかを数値で表したもので、1.2~1.7程度が平均的とされています。酸度が高いほど味わいが辛く濃く感じ、低いほど甘く淡く感じるなど、味わいの濃淡に影響するのが特徴です。
有機酸は、主にリンゴ酸や乳酸、コハク酸などがあり、お酒に酸味や旨味をもたらします。また、酸味は甘さを隠して味を引き締める効果があるため、日本酒度が同じ場合でも酸度によって甘辛の感じ方が違います。美味しいと感じるお酒の酸度を覚えておけば、次の1本を探す目安となります。
「日本酒は断然辛口!」「飲みやすい甘口が好き」と、いろんな意見を耳にしますが、本当に美味しいのはどちらでしょうか。もちろん、答えは「どちらも美味しい」です。ただし、好みは分かれますので、それぞれの美味しさの特徴や選ぶときのポイントを知っておきましょう。
甘口の日本酒に多い特徴を分かりやすく表現すれば、「一口目から美味しい」ということです。フルーティな香りのものが多く、口当たりがやさしく飲みやすいことから、日本酒に苦手意識を持つ若い方や女性に受け入れられ人気が高まっています。
酒屋さんで購入する場合は、「フルーティな香りと、甘い味わいが楽しめて、一口目から飲みやすい日本酒はありますか?」と訊ねてみましょう。また、日本酒の鑑評会やコンテストで受賞歴のあるお酒を選ぶと、失敗が少ないのでおすすめです。
辛口の日本酒に多い特徴は、「ついつい飲んでしまう美味しさ」です。一口目のインパクトは少なくても、料理と合わせることで美味しさの相乗効果を発揮し、ついついお酒が進んでしまいます。とくに和食との相性がよく、新鮮な魚介類など素材の味を楽しめる料理と相性抜群です。
酒屋さんで購入する場合は、「一口目から美味しいというより、料理と一緒にお酒が進むような日本酒はありますか?」と訊ねると伝わりやすいです。また、ここ最近人気になったものではなく、長年根強いファンに愛され続けている銘柄を選ぶと、失敗が少ないのでおすすめです。
これまで、日本酒の「甘口辛口」は主に日本酒度と酸度を指標に区分されてきましたが、新たな指標として注目されているのが「グルコース濃度」です。ここからは、グルコース濃度とは何か、日本酒の近年のトレンドについて解説します。
グルコース濃度とは、日本酒に含まれる「グルコース=ブドウ糖」の割合のことです。日本酒造りの工程のなかで、原料のお米は麹菌により糖へと分解され、分解された糖はさらに酵母によってアルコールと炭酸ガスへと変わります。その際、アルコールにならずにお酒に残った糖のうち、人が一番甘いと感じる「ブドウ糖」を測定したものがグルコース濃度です。日本酒に含まれる糖はブドウ糖のほか、甘みのない「デキストリン」や、ほのかに甘い「オリゴ糖」があり、どの糖が多くお酒に残っているかによって感じる甘みが違ってきます。
そもそも、日本酒度と酸度で区分している甘辛度は、実際に感じる甘辛度とは違っており、あいまいなところがありました。さらに、近年では日本酒の多様化に伴って、日本酒度と酸度では甘辛の判断がしづらくなっています。そのため、日本酒の甘さに直結するグルコース濃度と酸度で区分する、「新甘辛度」が広まりつつあります。
しかし、現在のところ、新甘辛度を取り入れて研究している酒蔵はありますが、グルコース濃度をラベルに表示しているお酒はほとんどなく、消費者にはわかりづらいのが現状です。
参考:清酒の甘辛区分表示について 独立行政法人酒類総合研究所
時代とともに嗜好も移り変わりがあるように、地酒ブームだった頃は「淡麗辛口」が美味しい日本酒とされていましたが、近年はグルコース濃度の高い甘い日本酒がトレンドとなっています。
全国新酒鑑評会や市販日本酒コンテストでは、年々グルコース濃度の高いお酒が出品されるようになり、高確率で受賞するなど高い評価を受けるようになりました。グルコース濃度の高いお酒の後にグルコース濃度の低いお酒があると、薄く感じて評価が下がることなどから、公平な審査となるようグルコース濃度別審査やグルコース濃度順審査を採用するまでになっています。
嗜好の変化に合わせて、日本酒は多様化しています。甘口がトレンドとはいえ、そこを入り口に辛口の良さを知っていく人も多いのが、日本酒の面白いところです。確かに甘口の日本酒は、若者の日本酒に対するイメージを変えるのに一役買っていますが、辛口の日本酒には、料理をより美味しくする、特に和食の良さを引き立てるという大変重要な役割があるのです。
日本酒は、「甘口」と「辛口」だけでは本当の味わいを表現しきれないことが理解していただけたと思います。「美味しい甘口辛口の日本酒をもっと楽しみたい」「甘口辛口の美味しい飲み方を知りたい」なら、日本酒について学ぶのがおすすめです。
日本酒で人生を豊かにする「酒道」を掲げた「酒道黒金流」では、美味しい甘口辛口の日本酒についてはもちろん、日本酒の知識や楽しみ方、日本酒を通じて得られる「幸福な人生」「豊かな人間関係」「地域の食文化・酒文化」について学ぶことができます。
日本酒の甘口辛口についてもっと知りたい方は、まずは「酒道黒金流」の無料コンテンツ「「酒道 黒金流」門前編」の次の動画を参考にしてみてください。
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日本酒の「甘口」「辛口」は、単にどちらかに分けられているのではなく、原料のほか成分、香り、造りによって変わってきます。消費者にとっては専門的で難しく、一目では理解しにくい場合もありますが、ラベルに記載されている情報を目安に選ぶことが可能です。ただ、お酒の甘みを表すグルコース濃度を実際に計っている酒蔵はまだ少なく、ラベルに記載されていないことが多いので、酒屋さんで訊ねてみるのがよいでしょう。受賞歴のあるお酒や長年愛され続けている銘柄などをポイントに選ぶのもおすすめです。これらを参考に、自分好みの味わいをぜひ見つけてください。