日本酒は季節ごとの美味しさがある!
旬を味わう四季折々の楽しみ方とは

Know this about sake!

日本酒は季節ごとの美味しさがある!旬を味わう四季折々の楽しみ方とは

日頃、何気なく飲まれていることの多い日本酒には、季節ごとに旬の味わいがあり、その季節ならではの楽しみ方があります。日本酒と季節とのつながりを知れば、日本酒がより味わい豊かに感じられ、四季の移り変わりを五感で堪能できます。

この記事では、日本酒と季節の関係や、季節ごとに旬を迎える日本酒の種類や特徴をわかりやすく解説しています。四季折々の日本酒の楽しみ方についても紹介していきますので、その季節にしか味わえない、いつもとは一味違う特別な時間を過ごすための参考にしてください。

日本酒は世界でも珍しい「季節」があるお酒

日本酒は、四季折々に楽しみ方がある世界でも珍しい「季節」があるお酒です。日本には、変化をはっきりと感じられる春夏秋冬の四季があり、日本酒についても、古くから春は「花見酒」、夏は「滝見酒」、秋は「月見酒」、冬の「雪見酒」というように、季節ごとに彩られる自然を愛でながらの風習が楽しまれてきました。
それは単に風情の問題だけではなく、製造工程の工夫や熟成期間によって、四季それぞれに旬や味わいがあり、さらには温度を変えて楽しむこともできる日本酒ならではの楽しみ方だといえます。また、旬の食材や料理との相性も良く、四季のうつろいを感じながら日本酒を味わえば、日本に生まれた喜びを改めて感じるはずです。

日本酒の味わいと季節の関係

日本酒は、酒造りのスケジュールや工程などの全てにおいて、季節と密接に関わっています。まずは、日本酒造りが本格的に始まる季節や、季節ごとに変化する味わいについて、日本酒と季節との関係を知っておきしょう。

日本酒造りが本格的にスタートする冬の「寒造り」

日本酒造りが本格的に始まるのは、最も気温の低い冬の時期です。寒いなかでお酒を仕込む昔ながらの伝統的な「寒造り」は、秋に収穫したお米の質を損なわず、雑菌が繁殖しにくい低い温度の環境で醸造でき、品質の優れた日本酒を造ることができます。そうして、冬に仕込み醸造され、搾られたばかりの日本酒は「しぼりたて新酒」として出荷され、春夏秋と熟成が進むにつれ、味わいを変化させていきます。
そもそも日本酒は、江戸時代の中頃までは、ほぼ一年中造られていました。しかし、気温の高い時期にもろみが腐敗して貴重なお米が無駄になってしまうことも多く、江戸幕府が出した「寒造り令」により、酒造りの期間が秋の彼岸から春の彼岸までと定められました。結果、お酒の品質が良くなったことで、次第に定着していき、現在でもほとんどの蔵で寒造りが行われています。



日本酒は季節ごとに味わいが変化する

日本酒は、熟成期間を長く必要とするワインよりも熟成が早く、季節ごとに味わいが変化します。冬や春のできたての味わいから、夏や秋の熟成が進み旨味が増した味わいまで、季節の移り変わりとともに異なる味わいを楽しめるのが、日本酒ならではの魅力です。
もちろん、搾られた後にただ寝かせておけばよいというわけではなく、殺菌や酵素の働きを止めて味の変化を防ぐ「火入れ」を最適な方法やタイミングで行ったり、厳密な温度管理のもとでゆっくり「貯蔵・熟成」したりと、出荷まで気の抜けない作業が続きます。造り手の技術や努力のもと季節を超えて丁寧に造られているからこそ、四季折々に旬の日本酒が楽しめるというわけです。

季節に旬を迎える日本酒の種類と特徴

年中いつでも美味しく飲める日本酒ですが、なかには限定された時期にしか出回らず、その季節にしか味わえないお酒があります。四季それぞれに旬を迎える日本酒の種類と特徴をみてみましょう。

【春】爽やかでフレッシュな薄にごりの「かすみ酒」

春は、卒業や入学、新生活の門出など、お祝いごとの多い季節です。日本には歓送迎会やお花見など大勢で集う文化もあり、祝いの席に華やぎを添える「春和酒」、桜を愛でながら味わう「花見酒」というように、春を迎える喜びの場にふさわしい風味や見た目を楽しめるお酒が多く出回ります。
なかでも、春の「かすみ酒」は、春霞を思わせるような薄っすらとにごりがあるのが特徴で、沈殿した澱(おり)を取り除かずに瓶詰めした、新酒の香りや風味を強く感じられる日本酒です。飲み口が爽やかでフレッシュな味わいが楽しめ、ほのかな苦みのある山菜料理などの春の味覚と相性抜群です。
春のお酒は、生まれたての生命力にあふれ、冬の間に活動が鈍っていた内臓を活性化します。

【夏】軽快でなめらかな「生酒」「生貯蔵酒」

夏は、暑気払いにぴったりの冷やして楽しめる日本酒が美味しい季節です。とくに、夏の「生酒」や「生貯蔵酒」は、「生」とつくお酒ならではの軽快でなめらかな味わいをしており、冷やすことでより清涼感のあるみずみずしさが増し、夏のさっぱりとした料理によく合います。
「生酒」は、通常2回行われる「火入れ」を全くせずに低温熟成させているので、搾りたてのフレッシュな香味があり、要冷蔵で早めに飲み切るのがおすすめ。「生貯蔵酒」は、瓶詰め後に1度だけ火入れをし、生酒に近いフレッシュ感が楽しめ、常温保存が可能ですがキリリと冷やして飲むのがおすすめです。
夏のお酒は、冷やして飲むことで身体の熱を冷まし、殺菌作用や食欲増進といった効用があります。

【秋】熟成して旨味たっぷりの「ひやおろし」

秋は、「実りの秋」といわれ、旨味や栄養価が高い旬の食材が豊富な季節です。日本酒もまた熟成が進んで旨味やまろやかさが増し、秋の味覚と合わせるとお互いの美味しさがより引き立ちます。
秋に旬を迎える「ひやおろし」は、冬に搾られたお酒を春先に1度火入れをし、ひと夏を涼しい蔵の中で過ごして熟成させ、2度目の火入れは行わずに出荷されます。そうすることで安定して熟成が進み、穏やかな香りとまろやかで旨味たっぷりのお酒になります。さらに、「ひやおろし」は秋の深まりとともに少しずつ熟成が進み、晩秋にはまろやかさを増して旨味が凝縮され、「寒おろし」と呼ばれる完熟した状態になります。
秋のお酒は、旬の食材と一緒に味わうことで、夏にたまった疲れを回復し、冬に向けて身体を整えるのにぴったりです。

【冬】華やかでみずみずしい「しぼりたて新酒」

冬は、秋に収穫されたばかりの新米で造られた新酒が楽しめる季節です。この季節にしか味わえない「しぼりたて新酒」は、できたてのフレッシュさを活かすため、火入れをせずに生酒のまま瓶詰めされるものが多くあります。搾りたてのお酒だからこその弾ける若々しさや荒々しさがあり、そのままの冷えた状態で飲むことで、華やかでみずみずしい味わいが楽しめます。美味しさのあまりつい杯が進んでしまうかもしれませんが、「しぼりたて新酒」は原酒タイプやアルコール度数が17度~18度と高めのものが多いので、飲みすぎないように気を付けましょう。また、冬の寒い時期にぴったりの「燗酒」は、染みわたる旨さとともに冷えた身体を温めてくれ、冬の味覚や鍋料理などによく合います。
冬のお酒は、冷やで飲んだり、温めて飲んだり、それぞれのお酒にあった温度でより美味しく味わえます。

四季折々の日本酒の楽しみ方

季節のうつろいとともに味わいを変えていく日本酒。その季節にしか味わえない旬があるように、四季ごとにいろいろな楽しみ方があります。季節の日本酒をもっと美味しく楽しむために、ここからは、四季折々の日本酒の楽しみ方についてみていきましょう。

旬の食材や料理とペアリング

何と言っても、日本酒をより美味しく楽しめるのは食事と組み合わせる「ペアリング」です。ペアリングと聞くと難しく感じるかもしれませんが、そもそも日本酒は和食以外にも、洋食や中華などほとんどの料理と合う、世界でも稀なお酒です。とくに旬の日本酒には旬の食材や料理とのペアリングがよく合い、お互いに美味しさを引き出し合うだけでなく、それぞれが持つ効用に相乗効果が生まれます。
旬の食材は、春は新陳代謝を促し、夏は身体の熱を取り、秋は疲労の回復を助け、冬は身体を温めるなどの効用があり、旬のものをいただくことは健康の秘訣にもなります。たとえば、季節ごとに次のような旬の食材があります。

春・・・タラの芽、ワラビ、タケノコ、川エビ、シラス、アサリ、ハマグリ
夏・・・トマト、ナス、キュウリ、シソ、梅干し、鮎、ウナギ、初ガツオ
秋・・・シイタケ、サツマイモ、山芋、ツガニ、サンマ、サバ、戻りガツオ
冬・・・大根、カブ、ゴボウ、イノシシ、クエ、ブリ、フグ、アンコウ

日本酒の温度を変えて味わう

冷やして飲んだり、温めて飲んだり、温度を変えて楽しめるのも日本酒ならではの良さです。日本酒は、温度によって香りや味わいを変え、5℃~10℃の「冷酒」で飲めば、香りが抑えられスッキリとした飲み口になり、30℃~45℃の「燗酒」で飲めば、酸味成分が旨味に変わり香りや味わいが芳醇になります。旬の日本酒だけでなく、いつも好んで飲んでいる定番酒でも、季節や料理に合わせて温度を変えるだけで楽しみ方の幅が広がります。また、日本酒には温度別に名称があり、それぞれにおすすめする季節がありますので、ぜひ楽しみ方の参考にしてください。

日本酒の温度 日本酒の温度別の名称 おすすめの季節
5℃程度 雪冷え(ゆきひえ)
10℃程度 花冷え(はなひえ)
15℃程度 涼冷え(すずひえ)
20℃程度 常温 春・秋
30℃程度 日向燗(ひなたかん) 春・秋
35℃程度 人肌燗(ひとはだかん)
40℃程度 ぬる燗
45℃程度 上燗(じょうかん)
50℃程度 熱燗(あつかん)

季節を感じる酒器で雰囲気を演出

日本酒の酒器には、陶器やガラス、金属などでできたお猪口(おちょこ)やぐい飲みのほか、近年ではワイングラスのような日本酒用のグラスもあり、見ているだけでも楽しいバラエティに富んだデザインがたくさんあります。春には桜など華やかなもの、夏には清涼感のあるガラスのもの、秋には紅葉をモチーフにしたもの、冬には重厚感のある温かみがあるものというように、季節を感じられる酒器で雰囲気を演出すれば、ワンランクアップした特別な時間が楽しめます。
また、酒器の形や素材、口径によっても日本酒の味わいが変わるため、飲むお酒や温度によって使い分けるのもポイントです。たとえば、ガラス製は味がシャープに感じられるのに対して、陶器製は味が柔らかく感じたり、口径が広いほど香りや味を強く感じたりと、酒器を変えるだけでもいろんな味わいを楽しめます。

季節限定のボトルやラベルを楽しむ

季節の日本酒は、飲む楽しみだけでなく、ボトルやラベルも楽しむことができます。春らしく桜の花びらが舞い、ハレの日にふさわしい松竹梅に彩られた華やかな色合いのものや、夏の夜空に打ち上げられた花火や金魚が涼しげに泳いでいるもの、秋の紅葉やお月見を楽しむうさぎが描かれたもの、冬の雪うさぎや美しい雪の結晶を表現したものなど、四季をイメージしたお酒のコンセプトに合わせてデザインされています。こだわって造っているからこそ中身のお酒も美味しく、飲み終わった後はインテリアとして飾るのも楽しみ方のひとつです。

近年のボトルやラベルのデザインは、日本酒の詳しい知識がなくても、見た目だけでつい購入したくなるような魅力的なデザインが増え、日本酒に苦手意識のある若者や女性に日本酒を楽しんでもらうきっかけにも一役買っています。

季節の日本酒をもっと美味しく楽しみたいなら

日本酒には、四季折々に旬を味わえるお酒があり、季節に合った楽しみ方があることを理解していただけたと思います。「日本酒の季節についてもっと知りたい」「旬の日本酒をもっと美味しく楽しみたい」なら、日本酒について学ぶのがおすすめです。

日本酒で人生を豊かにする「酒道」を掲げた「酒道黒金流」では、日本酒の季節についてはもちろん、日本酒の知識や楽しみ方、日本酒を通じて得られる「幸福な人生」「豊かな人間関係」「地域の食文化・酒文化」について学ぶことができます。

日本酒の季節ついてもっと知りたい方は、まずは「酒道黒金流」の無料コンテンツ「「酒道 黒金流」門前編」の次の動画を参考にしてください。
酒道黒金流|02.季節感や旬が好きなあなたへ

「酒道黒金流」では、創業400年を超える老舗日本酒蔵元「司牡丹」社長自ら、経験を交えて動画や文章でわかりやすく解説しています。司牡丹酒造の特別な日本酒や、定期的にオンライン交流を楽しめる有料コンテンツもありますので、興味のある方はぜひ参加してみてください。

まとめ

日本酒は、世界でも珍しい「季節」のあるお酒です。日本酒と季節はとても関わりが深く、冬に造られて生まれたばかりの日本酒は、若々しいフレッシュさがあり、春夏秋と少しずつ熟成が進むと、旨味が増して季節ごとに違った味わいを楽しめます。さらに、旬の日本酒は、旬の食材や料理との相性がよく、お互いの美味しさを引き出すだけでなく、効用の相乗効果が期待できます。旬のお酒や楽しみ方を知れば、四季折々に旬を迎える日本酒が待ち遠しくなっているのではないでしょうか。四季のうつろいを感じながら、その季節にしか味わえない日本酒をぜひ試してみてください。

日本酒は季節ごとの美味しさがある!旬を味わう四季折々の楽しみ方とは