日本酒のペアリングを
気軽に楽しもう!
美味しく組み合わせるコツを紹介

Know this about sake!

日本酒のペアリングを気軽に楽しもう!

日本酒の楽しみ方は人それぞれ。日本酒だけを延々と飲む人もいれば、食事をしながら楽しむ人もいます。以前は「日本酒は料理の邪魔をしないものがよい」とされていましたが、最近では「日本酒が美味しくなる料理との組み合わせ」や「料理が美味しくなる日本酒との組み合わせ」が注目され、日本酒と一緒に相性の良い食材や料理を楽しむ傾向にあります。

この記事では、日本酒のペアリングについての基礎知識や、知識がなくても気軽に楽しめるコツをわかりやすく解説します。日本酒に合うおすすめの食材や料理、自宅での楽しみ方もあわせて紹介していきますので、日本酒のペアリングを知りたい方、試してみたい方はぜひ参考にしてください。

日本酒のペアリングとは

日本酒のペアリングとは、日本酒とぴったり合う食材や料理との「美味しい組み合わせ」のことです。お米が主原料の日本酒は、炊き立てご飯がいろんなおかずと合うように、幅広い種類の食材や料理と相性が良いという特徴があります。「日本酒=和食」というイメージが根強いですが、実はイタリアンやフレンチ、中華など、バラエティ豊かな料理と一緒に楽しむことができ、その組み合わせは無限大です。

ペアリングとマリアージュ

ワイン用語の「マリアージュ」は、ワインと料理を組み合わせて新しい美味しさを引き出すことです。色々なペアリングを楽しむことで、マリアージュが生まれ、お酒や料理単体の味ではない新しい美味しさに出会うことができます。日本酒が好きな方は日本酒がもっと楽しくなり、日本酒が少し苦手な方でも、料理と組み合わせることで新しい美味しさに出会うことができるかもしれません。日本酒は、製法や酵母などの色々な条件でたくさんの個性がありますので、日本酒の特徴やペアリングのポイントをおさえて、気軽に楽しんでみましょう。

日本酒の香りと味わい

日本酒は、香りと味わいの特徴ごとに大きく4つのタイプに分かれます。まずは、ペアリングの基本として知っておきたい日本酒のタイプ、それぞれの香りと味わいの特徴、相性の良い食材や料理について解説します。香りや味わいのテイスティングがむずかしいという方は、この次の「気軽にペアリングを楽しむポイント」から読んでください。

フルーティな大吟醸・吟醸タイプ

大吟醸・吟醸タイプは、花や果実のような華やかでフルーティな香りがあり、比較的軽快な味わいが特徴です。日本酒初心者や苦手な方でも飲みやすく、近年では海外での日本酒ブームを牽引する人気の主流となっています。冷やしても温めても美味しくいただけますが、冷やしすぎると香りがあまり立たず、温めすぎると香りが飛んでしまうので気をつけましょう。食前酒としても適していることから前菜系の料理との相性が良く、果実を使った料理や、素材を活かしたあっさりとした味付けの料理に合います。例えば、大吟醸・吟醸タイプには次のような料理がおすすめです。

  • 白身魚のお刺身
  • タコのマリネ
  • オレンジと生ハムのカルパッチョ
  • アボカドとエビのサラダ

スッキリとしてなめらかな生酒タイプ

生酒タイプは、香りはひかえめで、日本酒では最も軽快でスッキリとしてなめらかな味わいが特徴です。「淡麗」と表現されることが多く、よく冷やして飲むことでさらにみずみずしく感じられます。通常の日本酒造りで行う「火入れ」をしていないため、冷蔵保存が基本となり開封後3日程度で飲み切るのが理想ですが、生酒ならではのフレッシュさを楽しめる魅力があります。比較的料理との相性は幅広く、素材の美味しさをシンプルに味わう料理や、酸味のあるさっぱりとした味付けの料理に合います。例えば、生酒タイプには次のような料理がおすすめです。

  • 冷奴
  • きゅうりの酢物
  • 出汁巻玉子
  • ゴーヤチャンプル
  • 鶏肉のソテー

コクのある純米酒タイプ

純米酒タイプは、日本酒本来のお米を感じるふくよかな香りと、バランスのよい旨味やコクのある味わいが特徴です。冷やしても、常温でも美味しく飲むことができ、温めることで旨味がさらにアップするなど、季節や料理に合わせてさまざまな温度で楽しむことができます。ごはんに合う料理であれば、和食に限らず洋食や中華、肉料理、魚料理とも相性が良く、食中酒としてぴったりなお酒です。チーズやバターなどの乳製品を使った料理や、しっかりした味付けの料理、深い旨味とコクのある料理に合います。例えば、純米酒タイプには次のような料理がおすすめです。

  • カツオのたたき
  • ピリ辛モツ味噌煮込み
  • 唐揚げ
  • レモンクリームソースパスタ
  • ビーフステーキ

個性的な熟成酒タイプ

熟成酒タイプは、琥珀色や黄金色の黄色みがかった色調で、ドライフルーツやスパイスを思わせる熟成香と、とろりとした甘みや酸味のある個性的な味わいが特徴です。熟成方法や熟成年数によって味が変化し、熟成年数が長くなるほど香りが強くなるので、慣れるまでは熟成年数の浅いものからチャレンジするといいでしょう。他の日本酒に比べて独特な風味があり好みがわかれやすいタイプですが、食後酒にも良く、濃い味付けの料理やスパイスのきいた料理、油分の多い料理などに合います。例えば、熟成酒タイプには次のような料理がおすすめです。

  • 四川麻婆豆腐
  • 豚の角煮
  • ウナギの蒲焼
  • ミートソーススパゲッティ

気軽にペアリングを楽しむポイント

日本酒の香りと味わいのテイスティングは、一見ハードルが高そうに感じるかもしれませんが、むずかしく考える必要はありません。日本酒にあまり詳しくなくても簡単にペアリングできるコツがあります。ここからは、自宅でも気軽にペアリングを楽しむポイントを4つ紹介します。

蔵元と同じ土地の特産品を合わせてみる

まず失敗の少ない鉄板のペアリングが、同じ土地の日本酒と料理を組み合わせる方法です。全国各地に存在する日本酒の蔵元と、同じくその土地の気候風土を生かした特産品はとても相性が良い傾向にあります。日本酒の個性は地域に根差して育まれたものが多く、その場所で慣れ親しまれてきた味や嗜好に合うようになっています。東北の塩味の濃い味、九州の甘い醤油の味などご当地の味を楽しみながら、料理と日本酒の組み合わせを知っていくことができますので、ペアリング入門としてはうってつけの方法です。全国の地酒や特産品はお取り寄せ可能なものがたくさんあり、旅行に行かなくても自宅で気軽に楽しめるので、おうち時間を充実させてみてはいかがでしょうか。

味付けの濃さから考えてみる

料理の味付けの濃さから考えてみるのも簡単なペアリングの方法です。素材の味や調理の味付けが軽いあっさりとした料理にはさっぱりと軽快な飲み口の日本酒、味わいや味付けの濃い料理にはコクのあるしっかりとした日本酒、というように、料理の味の濃淡と日本酒を合わせることで双方の良さを引き出してくれます。
例えば、魚のクセが少ない「白身魚のカルパッチョ」には、同じく軽い味わいの大吟醸・吟醸タイプを合わせることで、旨味の調和を取りながら、新しい美味しさを引き立てることができます。血合いが多く薬味などを合わせる「カツオのタタキ」は、コクのある純米酒を合わせます。魚や肉といったカテゴリーではなく、味わいや調理方法に合わせて選ぶようにしましょう。
また、味付けの濃い料理や脂っぽい料理に対して、反対に軽快ですっきりとした日本酒を合わせるのも面白いペアリング方法です。日本酒には、口の中を洗い流してリセットする効果があることも覚えておくとよいでしょう。

日本酒の香味と似た食材を探してみる

日本酒の香りと味わいに似た食材を合わせてみるのも、簡単なペアリングの方法です。凝った料理をしなくても、手軽に楽しむのであればフルーツとのペアリングなどいかがでしょうか。日本酒の表現でよく使われる「フルーティな香り」は、醸造過程で酵母が香気成分として排出するもので、果実や花といった植物由来の香りと同じものです。モモやリンゴ、メロンやバナナなど、日本酒の香りにはたくさんの個性がありますので、新鮮な季節のフルーツとペアリングを楽しめます。
また、日本酒と同じアミノ酸成分の豊富な発酵食品である「チーズ」とも相性が抜群です。日本酒とチーズはお互いに種類が豊富なため、大吟醸・吟醸タイプには「カマンベールチーズ」、生酒タイプには「チェダーチーズ」、純米酒タイプには「ゴーダチーズ」、熟成酒タイプには「ゴルゴンゾーラチーズ」というように、タイプ別に色々なペアリングを楽しめます。モモとモッツァレラチーズというように、フルーツとチーズの両方を使ったおつまみもおすすめです。

実は日本酒はほとんどの料理に合う

日本酒は、ほとんどの料理に合う世界でも稀なお酒です。日本酒とペアリングすることで料理の風味が増したり、魚介類や肉類の生臭さを消したり、料理の脂っこさや辛さを流したり、バランスよく味を調和したりと、さまざまな食材や料理との可能性を広げられる魅力があります。ペアリングのコツをつかんだら、いろいろなレシピに挑戦してみましょう。インターネット上のレシピサイトでは、「日本酒に合う」または試してみたい食材や料理名で検索すると、簡単に作れる料理やおつまみのレシピを写真や動画でわかりやすく紹介しています。自分好みのおつまみからペアリングを探すのも楽しみ方のひとつです。

旬の食材を日本酒の温度を変えてペアリング

四季折々に美味しい旬の食材があるように、日本酒にも旬があり、自然の四季を愛でながら味わったり、その季節にしかない日本酒を味わったりすることができます。 旬の日本酒を入手しなくても、もっと手軽に季節を楽しみたい方は、次の表のように日本酒の温度を変えて旬の食材と美味しく楽しむ方法があります。1種類のお酒から、温度のバラエティに富んだ味わいを楽しめるのが日本酒の大きな特長。ここからは、季節に合ったペアリングのコツを紹介します。

日本酒の温度別の名称 日本酒の温度 おすすめの季節
雪冷え(ゆきひえ) 5℃程度
花冷え(はなひえ) 10℃程度
涼冷え(すずひえ) 15℃程度
常温 20℃程度 春・秋
日向燗(ひなたかん) 30℃程度 春・秋
人肌燗(ひとはだかん) 35℃程度
ぬる燗 40℃程度
上燗(じょうかん) 45℃程度
熱燗(あつかん) 50℃程度

夏に冷やしてペアリング

暑い夏には、旬の淡白な白身魚と冷やした日本酒とのペアリングがおすすめです。鮎、アジ、キス、スズキ、イシダイなどのお刺身や塩焼きに、花冷えの吟醸酒や大吟醸酒を合わせれば、軽快な飲み口でさっぱりと美味しくいただけます。同じく夏が旬のシソを巻いた白身魚の天ぷらなら、シソの香りを楽しめるだけでなく夏バテ対策や暑気払いにもぴったり。酒器には、見た目にも涼しげな切子ガラスやガラスのぐい呑みなど、冷たいうちに飲み切れる小ぶりなサイズが適しています。

冬に燗酒でペアリング

冬の冷える夜に、燗酒はいかがでしょうか。日本酒は温めることで、酸味成分が変化して旨味がより芳醇になります。香りや味わいがふくらんだ燗酒には、脂がのった魚の干物とのペアリングがおすすめです。真アジ、真サバ、金目鯛、ノドグロなど、干すことで味が凝縮され旨味が増した干物と、お米のふくよかな風味がある純米酒をぬる燗にして合わせれば、旨味の相乗効果でより一層美味しくいただけます。酒器には、口径に厚みのある陶器や陶磁器が適しています。

問題:サンマの塩焼きにはどの日本酒を合わせる?

「サンマの塩焼き」といえば秋の味覚の定番ですが、どんな日本酒が合うのか、これまでのペアリングのポイントやコツから考えてみましょう。脂がのったサンマの旨味を想像した人は「ぬる燗の純米酒で合わせてみようか」、はらわたのコクや苦みを楽しむために日本酒を合わせたい通な人は「ちょっと熱めに上燗にした本醸造酒で一杯」、焼いたばかりのアツアツを楽しみたい人は「冷たい大吟醸でキュッと流そうか」など、思いつくのではないでしょうか。
このようにペアリングに正解はなく、好みによって組み合わせは異なります。料理と日本酒のタイプや温度との組み合わせ次第で、何通りにも味わいが変化し、想像した味わいが口に広がった時の楽しみこそがペアリングの醍醐味といえます。

自宅でもっと日本酒のペアリングを楽しみたいなら

日本酒のペアリングは、意外と簡単に楽しめることを理解していただけたと思います。「自宅でもっとペアリングを楽しみたい」「もっと美味しい日本酒を知りたい」なら、日本酒について学ぶのがおすすめです。

日本酒で生活を豊かにする「酒道」を掲げた「酒道黒金流」では、日本酒の知識や楽しみ方はもちろん、日本酒を通じて得られる「幸福な人生」「豊かな人間関係」「地域の食文化・酒文化」について学ぶことができます。

ペアリングについてもっと知りたい方は、まずは「酒道黒金流」の無料コンテンツ「あなたの「好き!」に、日本酒が答える!」の次の動画を参考にしてみてください。

「酒道黒金流」では、創業400年を超える老舗日本酒蔵元「司牡丹」社長自らが、経験を交えながら動画や文章でわかりやすく教えているだけでなく、司牡丹酒造の特別な日本酒やオンライン交流を定期的に楽しめるなど、充実した内容になっています。興味のある方は、ぜひ有料コンテンツにも参加してみてください。

まとめ

日本酒のペアリングは、比較的自由な発想で楽しむことができるのが特徴です。日本酒はお米から作られているからこそ和食だけでなく幅広い食材や料理との相性がよく、日本酒ごとに、料理ごとに合わせることで新しい魅力が無限に広がります。ペアリングを知れば知るほど日本酒がもっと楽しく、もっと美味しくなり、さまざまな組み合わせにチャレンジしたくなるのは当然です。考える時間や味わう時間を楽しみながら、自分好みのペアリングを見つけていきましょう。

日本酒のペアリングを気軽に楽しもう!